2018年08月07日

M35宮坂正春氏 執筆の青春小説『虹のかなたへ』連載開始!その一 異郷の空へ(57)

その一 異郷の空へ(57)
 

放課後、池上恵を伴って海山道場へ行った。恵にとって初めて見るこの道場は、想像以上に心躍る建物であった。もっと古くさくて、湿気臭いと思っていたのだ。それが、こんなにも明るくて広々した道場であったとは、思いもよらなかったのである。
「いいわねえ・・・。山ノ上さん、ウチ、ここで頑張ってみたいわ・・・」
「そうやろ、そう思うやろ。ボクも頑張るで。これから先、ずーっとな」
恵は道場の中を、物珍しそうに歩き廻った。板の上を歩く、素足の足裏の感触が新鮮で気持ち良い。
 しばらくすると、不田と井仲がやって来た。約束通り体操服に着替えている。二人は道場に入るなり、
「ホウ! これはええなあ」
感嘆の声を挙げた。そして、不思議そうに辺りを見渡している。
 池上恵は二人の姿を見るなり、急に顔を曇らせて傍へ駆け寄った。何か、飛んでもない事が起きそうに思えたのだ。
「あんたらはナニよ! ナニしに来たんよ・・・。また、山ノ上さんをいじめるつもりやの? 」
恵は二郎の腕にすがりながら、必死に叫んだ。以前、二郎を校舎の裏へ連れ出した事を、今、思い出したのだ。
「いや、ちゃうで。ワイらは山ノ上に、ここへ来いと言われたんや。そやから、何もせえへんで」
大きく手を振って、不田月男は弁解した。それを受けて
「そうやで。ボクが頼んだんや。そやから、そない気にせんでもええよ」
と言ったので池上恵は内心ホッとした。だが掴んでいる腕は放さなかった。
「今日はな、ゲームをするんや。面白いでェ。それを良うく見といて欲しいんよ。それで池上さんに、ちょっと手伝ってほしいんや」
『えっ! ゲームをするって? いったい、ナニをするんやろ』恵は不思議に思った。その時、フッと二郎の腕から恵の手が離れた。
 体操服の上に防具を着けた。そして恵に手伝わせて、兄貴分の不田に防具を着けさせた。昔の先輩たちが残してあった、古い防具である。
「なんやこれ、えらい古くさいやないかい。汚ないんとちゃうか」
「大丈夫やで。ボクがこの前、ちゃんと洗ったんや。きれいなもんや」
「ほんまかいな、それ。そんなん、信じられるか! 」
グズグス言いながらも不田は防具を身に着けた。面をかぶせようとすると
「ムッ、オイッ、ちょっと臭い。ヘンな匂いがするぞ。それにやな、息が苦しいし、前が見えへんで」
文句ばかりを言っている。
 用意が整い、道場の中央で竹刀を持って向かい合った。
「なんやこれ、えらい重たいなあ」
まだ文句を言っている。
「さあ、どこからでもええよ。掛かって来いよ。打ってきたらええで」
「ようし。ええか、ホンマやなあ。ケガをしてもワイは知らんで」


  

つづく




鰯のマリネ作ってみました。手開き何匹・・・(^^;
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posted by はくすい at 16:35| Comment(0) | 虹のかなた

会報校正なんとか終わらせました!

今日は暦の上では立秋ですが、秋の気配どころか管理人の周りでは熱中症患者が続出ですふらふら
それでも、朝晩すこしだけ熱波がゆるんできたかな?と思うのは私だけでしょうか?

今日、無事に会報の最終校正が終わりました。
酷暑の中、第1回目校正(8/2)のお手伝いして下さった。副会長(s48)木原先生と今日の校正(第2回目)に参加下さった理事の宮坂氏(M35)本当に助かりました。(私だけではどうなっていたことでしょうもうやだ〜(悲しい顔))ありがとうございますexclamation特に木原先生は第1回・2回と2度もお手伝いして下さいました黒ハート

残るは8/25(土)9時〜の封緘作業のみです!
お手伝いして下さる方、募集中です!(人海戦術でいきます)
白水会事務局までご連絡下さい。




今年度は4ページ増で読みごたえたっぷりです
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2018年08月02日

M35宮坂正春氏 執筆の青春小説『虹のかなたへ』連載開始!その一 異郷の空へ(56)

その一 異郷の空へ(56)
 

 昼の休憩時間。不田と井仲の二人は、弁当を食べると黙って席を立った。いつもは何かと騒々しいのに、静かに教室から出て行ったのだ。
『これはおかしい。絶対、ナニかあるぞ! 』ピン! と感じたので、気付かれないように二人の後を追いかけた。
 廊下を通って、隣の校舎の方向へ歩いて行く。あの小うるさい二人が妙に黙って、振り返りもしない。校舎から出て裏庭の方へ廻り、大きなポプラの木の下でやっと立ち止まった。木立の中の見えにくい場所である。付けられているのを、全く気が付いていない。何という間抜けな連中なのか。
『アホな奴らやなあ・・・』鼻の先で笑った。二人はポプラの根元へ座り込むと、ズボンのポケットからタバコの箱を取り出した。そして慣れた手つきで口にくわえた。まさにマッチを擦ろうとしたその刹那、待ってましたとばかりに、大声で叫んだ。
「タバコ、吸うたらアカンで! 」
突然フイを突かれたのと、声が大きいので二人は驚いて飛び上がった。慌ててタバコをズボンのポケットにねじ込み、うろたえながら声の主をキョロキョロと捜した。実に滑稽な場面だ。そこへ横から姿を現わした。
「ナッ! ナンヤ。山ノ上やないかい! びっくりしたなあ・・・。このアホッ! なんで付いて来たんや。ワイらを脅かすつもりか! 」
「そうよら。ワイらを先公に付き出そうと思うとんのか! そんなん、卑怯やないかい! そんなにええ顔がしたいんか! 」
「このガキ、いてもうたろか! 」
声の主を二郎と知って安心したのか、掴みかからんばかりに迫ってきた。
「まあ、待ちいや! 」
大声で叫んだ。そして行動を阻止するように、両手を大きく広げた。その勢いに押されたのか、二人は立ち止まった。
「ボクは、告げ口なんかせえへんよ。そんな卑怯なマネなんかするもんか。それより、そんなに元気が余ってるんやったら、クラブ活動で運動をやれへんか? 汗を流したら、気持ちがええで。健康的やしな、どうや? 」
「ナニ? クラブ活動やと? アホなことぬかすな! ワイらはな、自由が好きなんじゃ。そんなモンに束縛されへんのじゃ! 」
「そうよら! 野球やサッカーなんかはキライなんじゃ。ルールとか規則とか、うるさいんじゃい。ほかに、もっとええもんがあると言うんか! 」
顔をそむけながら、憎々しげに言葉を吐いた。
「あるよ、あるある。ボクが創った剣道部が有るよ」
「剣道? なんじゃそら。あんな古くさいモン、どこがええのや!」
「そうよら。あんなチャンバラなんか、どこがおもろいねん! 」
口を揃えて反撃した。
「それが面白いんやで。相手の頭を思いっきり叩いたら、気分がええで」
「アホかっ! あんなモン、誰でも叩けるわい。簡単なもんやないけ。動きは遅いし、長い棒を持ってるんやからな」
「そうよら。ワイでもお前より強いか分からへんぞ。ワイは子供の時はな、チャンバラが強かったんじゃ」
あくまでも減らず口を叩く二人に対して『ナニも知らない者は、態度だけはデカイな』と苦笑した。そこで計画通りにけしかけた。
「それやったら、ボクと剣道で勝負してみようか? 」
「おう、やっちゃる。やっちゃらよう。お前なんかに負けてたまるもんか」
「その通りや。お前なんか、ボカボカにやっつけたるで! 」
「放課後に道場へおいでよ。その代わり、タバコの件は黙っておくよ」
「よし、分かった、行っちゃるで! 」
二人にすれば、海山道場へ行くだけでタバコの件は無くなるのだから、随分と好都合である。その上、その場で二郎を屈伏させれば、自分たちの立場がはるかに優位になる。だから、渡りに船、と誘いに乗ったのである。何も知らないで・・・。
『これで思い通りになった』と腹の中でほくそ笑んだ。間抜けな二人は、策略に見事に引っ掛かったのである。

  

つづく


石切夏越大祓い神事(A31津田義貞氏の撮影)
6月30日 石切夏越大祓い神事.jpg
posted by はくすい at 13:04| Comment(0) | 虹のかなた