2019年12月05日

M35宮坂正春氏 執筆の青春小説『虹のかなたへ』連載第2章始まる!その二 悲しみと苦しみ(42)

その二 悲しみと苦しみ(42)
 
駅で汽車に乗った。
「今日はキツかったけど、アタシはあれで良かったと思ってるわ」
「そうや、ボクもそう思ってるよ。今迄が甘すぎたんや。あれでは試合に勝てるワケがないもんな。出島商業の合宿もあれぐらいやったし、よその学校より遅れている分、取り戻したいな」
「そうよね。アタシ、山ノ上さんに負けんように練習するから、お願いね」
「うん。お互いに切磋琢磨するんや」
バスに乗り換えると、睡魔が襲ってきた。座席にゆられて船を漕いでいるのを見て、真実子はクスクスと笑った。もう桜の花は満開であった。

 あくる日。学校までの道すがら、少し前の方に防具袋を担いでいる男の姿を見つけた。それが剣持先生だと気付いたので、足早に近付いた。
「先生、おはようございます。荷物、ボクが持ちます」
竹刀袋に手を掛けて、防具を受け取った。
「やあ、山ノ上か。おはよう。スマンな」
先生と並んで歩いた。その後ろに真実子と苅川が続いた。
「お前、大阪の泉川高校から来たと言うてたなあ」
「ハイ、そうです。去年の六月に来ました」
「そうか、俺は川下先生に会うたことがあるぞ。教職員の近畿大会で試合をやったんや。強い先生やったな」
「えっ! そうなんですか・・・。知ってはるんですか」
この先生は、そんな大会に出場するほど強いのか。そして、その試合の結果はどうだったのか。
「あの先生が教えてるから泉川高校は強いんや。出島商業も古山先生がいてはるから、あれほどまでになれたんや。俺は安田先生から、お前と草山のことは聞いていたんやぞ。昔の強い海山高校を知っているから、お前たちを指導してみようと思うたんや」
「ハイ、ありがとうございます。先生は昔の海山高校のこと、知ってはるんですか? 」
「おお、知ってるぞ。強かったな。俺の同期で吉雪という男がおってな、コイツが強うて、対抗試合で俺は三回も負けたんや。三年生になってから四回目でやっと勝てたなあ・・・。昔の話や」
もっと話したかったけれど、学校はもう目の前であった。
「先生、防具を道場に置いてきます」
「おお、そうか。すまんな」
一礼して駆けだした。
『やっぱり、剣持先生はすごいんや。ボクは必ず付いて行くぞ! 』走りながら、そう思った。

  

つづく

母校の公園も銀杏の絨毯で冬らしくなってきました
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posted by はくすい at 11:18| Comment(0) | 虹のかなた

気まま旅『 その壱参 福岡県 その三 』M38泉谷忠成

『 その壱参 福岡県 その三 』 


能古島アイランドパーク、姪浜渡船場からフェリーで能古島まで約15分、島全体がお花畑。私の行った時は島全体がコスモス畑でした。
その花畑の中に、のこのこボールがありました。それはゲートボールをゴルフコース化したと言った方が分かりやすいと思います。
島の中には受付事務所が一軒あるのみ、当時は誰もいない、まるで島(お花畑)を独り占めの中でのプレー、自分の庭のような感覚でした。
今はコテージ・レストランが出来、宿泊も可能になっているようです。自分の庭のようなお花畑の中でのプレーは感動!の思い出。更に志賀島、こちらは島のようですが福岡から細い一本道でつながっていて車で行くことが出来ます。サイクリングコースがあり、レクレーションの島と言った方が適切だと思います。
私の住んでいたところは西新、平成以降大きく変わって行きました。当然私たちの住んでいたところも大きなビルに、当時の面影はなく様変わりの様相になって行きました。
福岡県人の気質は、大阪ではなく常に東京を意識していました。その事を思わすような変容ぶりでした。

西新の近くに元寇防塁の碑がありました。元寇防塁は西の今津から東の香椎浜までの20Kmに渡って築かれ、そのほぼ中間にあたるのが西新・百道地区の防塁でした。
私のいた当時は自然のままの形で残されていましたが、今は遺跡として整備保存されているようです。
当時小高い丘の上に碑があり、歴史で習ったのは、二度の暴風で蒙古軍は海上で大破したと記憶があるのですが、その碑の説明には、一部西新辺りまで上陸し、双方が犠牲になったとありました。




能古島(奥に見えるのが志賀島)
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posted by はくすい at 11:05| Comment(0) | 旅だより

2019年11月28日

M35宮坂正春氏 執筆の青春小説『虹のかなたへ』連載第2章始まる!その二 悲しみと苦しみ(41)

その二 悲しみと苦しみ(41)
 
駅までの間、七人は一塊りになってトボトボと歩いた。体が綿(わた)のように疲れていて、歩くのも喋るのも、おっくうになっていた。海山道場での練習しか知らないのだから、当然と言えよう。
「しんどいなあ・・・。足が棒のようになってしもた。明日(あした)歩けるかなあ」
「そうねえ・・・。アタシ、明日、休むかも知れへんわ」
「そんな情けない話をしないで。アタシはもっと練習するわよ。やっぱり、強くなるには、稽古しかないのよ、これぐらいの練習を毎日しないとアカンのよ。アタシはやるわよ! 」
「そうや。毎日続けたら、体が勝手に付いて行くようになるんや。ゼッタイに強うなれるで。ボクもやるで! 」
とにかく疲れて、意気が消沈しているのを奮い立たせようと、強い口調で言った。そこで考えた。疲れた時は、甘い物が一番だ。
「なあ、みんな。また、あのぜんざいを食べ行こうや。ボクが奢るよ」
財布の中にはアルバイトの給金が、手つかずに残っている。だから七人分の代金ぐらいは大丈夫なのだ。
「えっ! 本当? 本当やの、山ノ上さん! 」
まっ先に、恵が飛び上がって喜んだ。先程の、疲れ切ってげんなりしていた表情は何処へやら、顔がパーッと晴れて一度に元気になったようだ。そのとたん、恵の腹の虫がグーッと鳴った。それを聞きつけた真実子が笑った。
「そうや。みんなで食べに行こう! 」
 甘党の店へドヤドヤと入った。先客が居たので七人は別々に座った。以前と同様に、ぜんざいは抜群に美味しかった。砂糖の甘いその味が血となって流れ、疲れた体全体に染み渡って行くような気がした。
「やっぱり、ここのぜんざいは旨いなあ。おいしいで・・・」
「当たり前や。奢って貰ってるんやから、余計においしいやろ」
「今度は、苅川さんが奢ってね」
「やかましい! この次は池上さんに頼んどくわ。奢ってや、ええやろ」
「アタシは、食べるのが趣味なんよ。他人(ひと)に奢るのなんか、イヤよ」
「そんなら・・・、草山さんにお願いしょうかなあ」
「良いわよ。このアタシが、苅川さんに奢ってあげるわよ」
「えっ! ホンマに? 草山さん、ホンマに驕ってくれるんか? 」
「ええ、そうよ。この次ね。そうやねえ・・・、十年ぐらい先かな? 」
「ナニッ! 十年先やて? そんなん、殺生や! 」
疲れ果てて、喋るのも苦痛だった連中が、アッという間に元気になってしまった。げに恐ろしきは食べ物である。

  

つづく

ピンクの彼岸花
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posted by はくすい at 16:01| Comment(0) | 虹のかなた