2020年03月31日

M35宮坂正春氏 執筆の青春小説『虹のかなたへ』連載第2章始まる!その二 悲しみと苦しみ(63)M35宮坂正春

その二 悲しみと苦しみ(63)
 
 病院に駆けつけた時、祖父はすでに息を引き取っていた。伯父の恵介一家は勿論、親戚が数名ベッドの横に集まっていた。
「おじいちゃん・・・」
叫ぶ目から涙が溢れた。先日、ここで祖父と言葉を交わしたのが最後であった。昨年の六月以来、祖父にはお世話になり通しであった。今、こうして剣道が出来ているのは、公介の助力の賜物なのである。
「あ、二郎ちゃん、来てくれたのねえ。おじいちゃん、とうとう逝きはったワ・・・。お母さんにも連絡が付いてね、今夜、遅うなるけど帰ってるって言うてたよ」
伯母の由美が言った。娘の恵美子がそばに寄ってきた。
「お兄いやん・・・。おじいちゃん、死んでしもたんや・・・」
腕にしがみつき『ワーッ』と声を挙げて泣き出した。
「そうやで・・・。おじいちゃんはもう、居たはれへんのやで・・・」
ポロポロと涙をこぼした。もうあの豪快な笑顔は見られないのだ。そう思うと余計に悲しかった。

  

つづく


学校の桜も満開近し^^
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2020年03月24日

M35宮坂正春氏 執筆の青春小説『虹のかなたへ』連載第2章始まる!その二 悲しみと苦しみ(62)M35宮坂正春

その二 悲しみと苦しみ(62)
 
「よいか、お前たちには技の幅というものがない。もっと色々な技を遣わなければ、試合には勝てんのやぞ。中学生と違うて高校生なんやから、体力もあるし、瞬発力もいっぱいあるんや。それを上手に遣わなアカンのやぞ。分かったか! 」
「ハイッ! 分かりました! 」
剣持先生は多彩な技を披露し、その遣い方を教えてくれた。特に先生の、胴を打つ技は素晴らしいものだった。このような種々の技を駆使できるようになれば、試合で勝てるかも知れないと思った。だがそれ迄は、相当の訓練が必要であろう。
その時、道場の入口から、安田先生があたふたと入って来た。
「山ノ上。山ノ上は居るか! 」
何事か、ひどく慌てている様子である。
「ハイッ。ここに居ります」
練習の手を止め、面を着けたまま安田先生の前へ進み出た。
「おう、山ノ上。今、電話があってな、おじいさんが危篤やと言うて来たんや。早く帰ってやれっ! 」
「えっ! おじいちゃんがっ! 」
と絶句した。やっぱり心配していた、その時が来たのか。
 剣持先生の方へ顔を向けると、先生は、腕組みをしたまま固い表情で『うん』と頷いた。そして顎を右に振って『早く帰ってやれ』と言う合図を送った。その場で礼をして輪から離れた。防具を外すのももどかしく、その場に置いた。真実子が駆け寄り
「アタシが片付けておくから、早く帰ってあげて! 」
その言葉に片手を挙げて会釈し、手早く着替えて足早に道場を出た。 
 
  

つづく

花冷えの二次願書受付です
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posted by はくすい at 14:23| Comment(0) | 虹のかなた

2020年03月19日

M35宮坂正春氏 執筆の青春小説『虹のかなたへ』連載第2章始まる!その二 悲しみと苦しみ(61)M35宮坂正春

その二 悲しみと苦しみ(61)
 

「ウッ・・・」
声を立てる間もなく唇を奪われてしまった。今までに感じたことのない甘美な快感が全身を貫いた。ゴムマリのような圧迫感が胸に気持ちよかった。その上、奈々子が唇をチュッと吸った。その感触がたまらなく心地良く、夢を見ているようなフワフワとした気分になった。それで思わず奈々子をギュッと抱きしめてしまった。だが、ハッと我に帰った。
『こんなことをしては、アカンのや! ボクらは、まだ高校生なんや! 』
理性が勝った。カッと目を開き、力いっぱい奈々子を離した。
「アカン。こんなことしたらアカンのや! ボクらは大人やない。まだ学生なんやで。なあ長岡さん、ボクはずっと友達でいたいと思うてるのに、こんなんやったら、付き合うていかれへんやろ。それでも、かめへんのか! 」
大きな声で叫んだ。それでも奈々子は再び抱きつき
「イヤッ、アタシはイヤよっ・・・。二郎さんと友達やなんて、ゼッタイにイヤよっ!」
まるで小さな子供が駄々をこねるように、体をゆらして激しく言った。そして自分から身を引くと、キッと見据えた。
「アタシ、もう帰る。でも二郎さん、忘れないでねっ! アタシと二郎さんは、こういう仲になったのよ・・・。あなたを、アタシ以外の誰にも渡せへんわよ! ゼッタイに、忘れんといてねっ! 」
そう言ってきびすを返した。
「ちょっと待って、ボクも一緒に! 」
慌てて追いかけようとすると彼女は
「来たらアカン! アタシ一人にしてっ! 」
悲痛な声で叫び、元来た方へ走り出した。途中で一度振り返り、涙でうるんだ瞳で悲しそうにジッと見た。
「長岡さん、ごめんな・・・。ボクが悪いんや」
その場に呆然と立ちつくし、深々と頭を下げた。
 なぜ、あのような言い方しか出来なかったのだろうか。とうとう、彼女の心を傷つけてしまったのだ。いくら反省しても、後の祭りであった。
去って行く後ろ姿を目で追いながら、つくづくと反省した。一度口から出た言葉は、二度と取り戻せないのだ。

  

つづく


今日は暖かく晴天の合格発表
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posted by はくすい at 14:14| Comment(0) | 虹のかなた