2020年09月15日

M35宮坂正春氏 執筆の青春小説『虹のかなたへ』連載第2章始まる!その二 悲しみと苦しみ(86)M35宮坂正

その二 悲しみと苦しみ(86)
 
家に帰ると、手紙が届いていた。見ただけで分かる奈々子であった。
『拝啓。六月も下旬に近付いてきました。二郎さん、お元気でいらっしゃいますか。全国大会の予選が迫ってきました。あなたを始め、剣道部の皆さんは一生懸命練習をされているのでしょうね。お元気な姿が見えるようです。
 先日見せて頂いた海山道場は、とても素晴らしかったわ。貴男の汗がたくさん染み込んでいるような気がして、私はとても感心したんです。私もあの道場なら練習をしてみたい。あなたと一緒に竹刀を振ったり、打ち込みをしたりして、額にいっぱい汗をかいてみたいのよ。そして、その汗をあなたに拭いてもらいたいの。その代わり、あなたの汗をちゃんと拭いてあげる。そう、ちゃんとよ。草山さんには負けないわ。
 今、武者小路実篤の『友情』という本を読んでいます。とても感激しているのよ。主人公と令嬢との恋愛は、とても劇的ですばらしいわ。音楽会へ行ったり、舞台を見に行ったりするなんて、まるで夢の中みたいなの。
 あなたとは一度、映画を観に行ったわね。私もあんな恋愛をしてみたいのよ。相手はやっぱりあなただわ。私に一番似合っていると思うのよ。
 あの日の海辺でのこと、一生忘れません。でも、あなたは私のようなブスはキライなのかも知れませんね。
 ああ、早く試合の日が来て欲しい。あなたに一日でも早く会いたいもの。あっ、いけない、もう時間が遅いからペンを置くけど、試合、頑張ってくださいね。それからもし、試合場で私を見つけたら、必ず声をかけてくださいね。待っています。さようなら。         奈々子より』
読んでいる内に、顔が熱くなった。こんな手紙を母に見られると大変だと思った。だけど、この奈々子は、何が目的なのだろうかと考えた。だが、見当が付かなかった。以前にも書いていたが『草山さんには負けない』との強気な発言には困るものがある。とかく、女性の心理は不可解である。
 
 夜、銭湯へ行き湯船の中で考えた。もう賽は投げられたのだ。明日はやるしかないのだ。風呂から上がる時、頭上から水を何杯もかぶった。精神を集中する為に一番良いと思ったのだ。

  


鯵も美味しい季節になって来ましたネ
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posted by はくすい at 15:55| Comment(0) | 虹のかなた
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