2019年07月18日

M35宮坂正春氏 執筆の青春小説『虹のかなたへ』連載第2章始まる!その二 悲しみと苦しみ(27)

その二 悲しみと苦しみ(27)
 

明くる日、母は朝早く旅立って行った。心細くないと言えば嘘になるが、こんな境遇に負けないで頑張るんだと、気を引き締めたのであった。
「小母さん、大阪で暮らすんですってね。きのう、挨拶に来られたそうよ」
バスの中で真実子が話しかけた。
「うん、そうやねん。半年ぐらいやと思うよ。そんなに長い間やないから、ボクは平気やで。それより、今度の試験の方が大事や」
「アタシ、お家(うち)のお掃除に行ってあげようか? 綺麗にしてあげるよ」
「えっ! いや、いらんいらん。自分でするよ。そんなん、いらん」
「強がり言って、本当に大丈夫? 天井にクモが巣を張るのと違う? 」
クモが大の苦手なのだ。あの不気味な姿を見ただけでも、ゾッと背筋が冷たく成る程だ。それを知っていたのだ。
「大丈夫や。ホンマやで! 」
胸を叩いて言った。決して強がりではない、やり遂げる自信があるからこそ言えたのである。誰が蜘蛛などに巣を張らせたりするものか。だが、そんな話を持ち出すとは、なんと小憎(こにく)たらしい真実子だろうか。そう思いながら見ると、得意そうに唇を尖らせていた。


  

つづく



ナッツにもはまっています!
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posted by はくすい at 11:33| Comment(0) | 虹のかなた
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