2019年06月27日

M35宮坂正春氏 執筆の青春小説『虹のかなたへ』連載第2章始まる!その二 悲しみと苦しみ(25)

その二 悲しみと苦しみ(25)
 
 汽車の中で、真実子と苅川に父親の件を話した。事故の原因、怪我の重さ、治癒するまでの期間などを隠さずに話したのだ。二人は驚き、同情をした。
「それで、小母さんはいつ帰って来はるの? 」
「うん。うまく行ったら、明日(あした)帰ると言うてたけど、歩けるようになるまで半年も掛かるのに、二日や三日で済む筈がないもんなあ。そやから、その半年の間、ボクは一人で頑張るんや」
「そう・・・。そしたらその間、山ノ上さんは大変やねえ・・・」
心配そうに真美子が言った。
「大丈夫やで。ボクには親戚が居てるし、ご飯もちゃんと用意してくれる。そやから、なんの心配もあれへん。お父はんも手術したから安心やし、あとは回復を待つだけや。平気、平気」
胸を張ってみせた。事実、そう思っているのだ。

「山ノ上君って、偉いんやなあ。ホンマに大人やで。オレ、感心したで」
「そんなんやないよ。こんな場面になったら、誰でも辛抱できるようになるよ。人間て、そういうもんやと思うで」
「そうかなあ。そんなん、オレには想像でけへん」
「あした、小母さんが帰ってきたら良いのにねえ・・・」
ポツリと言った、真実子の言葉が嬉しかった。
 今日は帰宅が早かったので、洗濯をやろうと思った。恵介宅で食事を世話になるのは良いとしても、その他で世話になるのは心苦しい。出来ることは自分でやろうと思った。
 先ず、三和土(たたき)でカンテキ(七厘)に火を起こす。紙を燃やして細い木枝を加える。勢い良く燃えたら小さな炭片を置いて、しっかりと燠(おき)を作るのだ。 練炭を乗せて着火する迄に、箒で座敷を掃き、雑巾で縁側や玄関の板の間を拭いた。水は冷たいが平気である。一生懸命にやると、額に汗が出てくる程になった。
 練炭の裾に火が付いたので、火鉢の中へ入れ込んだ。火が残っているカンテキの上に水を入れた洗面器を乗せた。沸くまでにはならないが、熱くなるだろう。火鉢の上にはヤカンを乗せておいた。これでようやく、洗濯をする用意が出来たのだ。
 肌着を盥(たらい)に入れ、洗濯石けんと洗濯板を使って、ゴシゴシと洗った。熱くなった洗面器の水を加えると、手先の冷たさが随分と楽になった。次はすすぎである。ヤカンの湯と井戸の水で何度もすすいだ。その後、手で絞り、物干しの竿に掛けてピンピンと引っ張った。空の青さに白い洗濯物のコントラストが良く、気持ちが良かった。
 
  

つづく


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posted by はくすい at 14:40| Comment(0) | 虹のかなた
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