2019年06月04日

M35宮坂正春氏 執筆の青春小説『虹のかなたへ』連載第2章始まる!その二 悲しみと苦しみ(21)

その二 悲しみと苦しみ(21)
 

家へ帰って見ると、色々な物が片付けられていた。洗濯物などもキチンと畳まれており、シャツにはアイロンが掛けられてあった。
『やっぱり、ウチのお母(か)んは大したもんや』感心をした。
 母は大阪へ行くのにも、色々と用意が必要であっただろう。大怪我をしている父に対して気を遣った違いない。交通費や入院費、大阪での滞在費、その他のお金など、足りているのだろうか、と少し気になった。
  
 朝、六時半に祖父の家に行った。中は温かく朝食の用意が出来ていた。
「お兄いやん。ご飯食べよらよ」
恵美子がニコニコとしながら言った。
「ハイ、頂きます。処で、おじいちゃんの具合はどうなんですか? 病気やないんですか? 」
伯母の由美に尋ねた。
「うん。昨日(きのう)から腹がシクシク痛む、言うて寝てはるんやけど、どんなんかなあ・・・。あとで様子を見てくるワ」
その時、電話のベルが鳴った。相手は里子であった。すぐに二郎に受話器を手渡した。
「モシモシ。二郎ちゃん、お母さんよ。お父さんね、昨日の夜、右足の手術をしたのよ。体は元気やから大丈夫なんやけど、とても痛がっていたわよ。それで今日、左足の手術をするんですって」
「それで、お母はんはどうするんや? ずっと大阪に居るんか? 」
「ううん、今日の手術が終って経過が良かったら、あしたにでも帰るわよ。あっ、そうやわ。タンスの引き出しにお金、五千円入れてあるから、もし何かあったら使っても良いわよ。学校、遅れないように行きなさいよ、良いわね・・・。そしたら、伯母さんに代ってちょうだい」
由美に受話器を渡した。柱時計を見ると七時を少し過ぎていた。短かい電話であったが、時間を取られたのだ。慌てて鞄を持って店の外へ出た。そして走り出したとたん、
「お兄いやん! 忘れ物やで。お弁当、お弁当! 」
恵美子の声が耳に入った。振り返ると、包みを持って追いかけてきている。
「おおきに。恵美ちゃん! 」
弁当を受取ってバス停へ走った。辻の角を曲がった処で突然右足が敷石に躓いた。アッと思った瞬間、バランスを崩して、大きくタタラを踏んだ。
『アッ! コケるっ! 』両手に鞄と弁当を持って転べば、無様(ぶざま)な姿を晒してしまう。咄嗟に左足を踏み出した。ダーッと頭が落ちかかって
『アブナイッ! 』すんでの処で頭が止った。息を弾ませながら前方を見ると、バスが発車して行った。
「あーあ、乗り遅れてしもうた。草山さん、ゴメンな」
仕方なくバス停で待った。もう、真実子は汽車に乗っただろう。苅川は自分の居ない車内で、真実子とどんな話をするのだろうか、と少し気になった。

  

つづく


最近煎り豆にはまってます!
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posted by はくすい at 14:11| Comment(0) | 虹のかなた
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