2019年05月14日

M35宮坂正春氏 執筆の青春小説『虹のかなたへ』連載第2章始まる!その二 悲しみと苦しみ(16)

その二 悲しみと苦しみ(16)
 

 審査の当日、会場に集合した。
「ええか! 気を落ち着けるんやぞ。慌てんと、自分の技を出すんやで」
「そうよ。みんな同じレベルなんやから、基本を守ったら良いのよ」
それぞれに声を掛け合った。
 稽古着、袴、防具等の着装も審査の対象なので、キッチリとしなければならない。そう、面や胴の紐の長さや、結び目までもなのだ。
 
 順番を待っていると、隣のコート、初段の受験者の中に見覚えのある顔が見えた。出島商業の星野であった。
「やあ星野君。アンタは初段を受けるんか? 」
「うん、そうや。山ノ上君は二段か。ええなあ、オレもそっちへ行たいよ」
「ううん、こんなんは順番や。今日アンタが初段通ったら、来年は二段やから一緒やで。お互いに頑張ろうな」
「うん、そうやな。あっ、そうや、今日はマネージャーが来てへんのや。風邪を引いて、熱がひどいらしいで」
「あ、そう。それは可哀想やなぁ・・・」
内心ホッとした。しかしその反面、一抹の寂しさが脳裏をよぎった。
 
 二郎の相手は変に偏った技を遣う、イヤな相手であった。試合ではないので、正々堂々と自分の剣道をすれば良いのだ。それなのにフェイントを仕掛けるのでタイミングが合わない。苛立ってメンに飛んだ。そこで
「ヤメッ! 」
と号令が掛り、立会いは終った。わずか一分もない、短時間であった。
 真実子も相手には苦労をした。相手はガムシャラに打ってきた。気合いを掛ける間もなく、力まかせに打って来るのだ。
『こんなのは剣道ではない! 』そう思いながら、相手の竹刀を躬(かわ)した。そして自分の技を出す場面もなく、時間が過ぎてしまった。
 全員の実技審査は終了した。あとは合格の発表を待つだけだ。受審者はざわめきながら待っていた。自信があるのか、形の練習をする者もいる。
 暫くして係員が用紙を持ってきた。この用紙に合格者の受験番号が書かいてあるのだ。各コートに人垣が出来、張り出されると同時に『ワーッ! 』と喚声が挙がった。合格した者の喜びの声だ。
 二郎は自分の番号がないのを知った。つまり、実技は不合格なのである。真実子、石坂、浦山の三人も番号がなかった。その中で唯一人、苅川だけが実技合格となった。彼は大いに喜んだ。
「やったーっ! 通ったぞーっ。初段に合格や! 」
片手を挙げて大勢の中を走り廻った。
「喜び過ぎたらアカンのに。この前と同(おんな)じになれへんやろうか? 」
真実子がつぶやいた。
『喜ぶのは良い。けれど、喜び過ぎてはいけない』真実子のこの言葉は、名言だと思った。過ぎたるモノに悪魔が宿るのかも知れない。
 日本剣道形の審査が始まった。苅川は勢い込んで審査に臨んだ。一本目、二本目と無事に演じた。三本目になって打太刀の相手が間違ったので、彼も間違った。気付いてやり直しをしたが、次も間違ってしまった。そこで立会からストップが掛った。これで苅川の不合格が決定した。
 受験者全員の不合格に、二郎は憮然と肩を落とした。
『アカン。なんとかしなければ・・・』ジリジリと焦りを感じた。真実子も黙ったままだ。どうすれば良いのだろうか・・・。

  

つづく

今日は体育祭準備、今まで手にしたことのない重さの資材運びから(^^;
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だいぶん組立ってきました(白水会寄贈のパイプスタンド)
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posted by はくすい at 13:00| Comment(0) | 虹のかなた
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