2019年04月25日

M35宮坂正春氏 執筆の青春小説『虹のかなたへ』連載第2章始まる!その二 悲しみと苦しみ(14)

その二 悲しみと苦しみ(14)
 



紹介しとくわ・・・。ウチのお母(か)んと、妹の京子や」
二人はペコッと頭を下げた。こちらも
「お世話になりまーす! 」
お辞儀をして挨拶をした。
「さあさあ。みなはん、よう来てくれはったなぁ・・・。なーんもええ物(もん)はあれへんけど、ゆっくりしていってや」
愛想良く席を勧めてくれた。
 囲炉裏の鍋は寄せ鍋である。机の上にも料理が用意されていた。先ず、苅川純夫の十六才の誕生日を祝って、ジュースで乾杯をした。そしてワイワイと喋りながら食べ始めた。
「この寄せ鍋は、旨いなあ・・・。最高の味やで」
「ほんまやなあ。なんぼでもお腹に入るで」
「アタシ、こんな料理、初めてやわ。おいしいわねえ」
「そうねえ。こんな味は、どないしたら出せるんやろ、教えて欲しいわ」
「アタシねえ、お料理が下手なんよ。キライやないんやけど、不器用やから、うまく出来へんのよ。上手になって、将来のダンナさんに美味しいものを食べさせてあげたいんやけど、ねえ・・・」
恵がしみじみと言った。美紀はその言葉に頷きながら
「アタシもそうなんよ。料理の上手な人ってホント、羨ましいわ」
その声を聞きつけた井仲が、汁をすすりながら言った。
「オイオイ、聞き捨てならんなぁ・・・。ウチの女子はみんな、料理が下手なんか? そんなんやったら、オレの嫁さんに貰ってやられへんがな」
「フーンだ! 貰って欲しくないもーん。アタシはねえ、池上家の大事な大事な、箱入り娘なんよーだっ。井仲さんなんかより、もっとお金持ちで、気ィの優しい人の処へお嫁に行くのよ! 」
「しもたっ、やられてしもたわっ! 」
ワッと爆笑の渦が湧いた。
 暫くの後、気付いた。土産を持って来たのに、誰も出していなかった。
「あっ、そうやわ、忘れてたわ。苅川さん、これ、お土産よ。どうぞ」
最初に差し出したのは真美子だった。
「ホンマや、オレも持って来てるんや。ホラ、これや」
一斉に苅川の目の前に差し出した。羊羹、カステラ、果物、クッキー等々、甘い物ばかりであった。
「これ、気持ちだけのお祝いよ。アタシの手作りよ」
美紀が手渡したのは、押花で作った栞であった。
「うわーっ、嬉しいなあ。こんなん貰うのん、オレ、初めてや。片山さん、大事にするで! おおきにっ! 」
苅川は大袈裟に喜んだ。本当に嬉しかったのであろう。女の子の手作りの物を手にするなんて、初めてであったのかも知れない。
 食事後、妹の京子を加えてトランプ遊びをしたり、剣道談義などに花が咲いた。そして楽しい時間は、アッという間に過ぎたのである。
「今月の末には昇段試験があるぞ。明日から稽古をみっちりとせなアカンのやで。みんな、分かってるな! 」
年長者らしく浦山が座を締めた。
「そうや、あしたからまた頑張ろうな! 」
全員が顔を見合わせ、お互いに確認しあった。

  

つづく


学校のサツキも、のうすぐ満開に
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posted by はくすい at 17:19| Comment(0) | 虹のかなた
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