2019年03月14日

M35宮坂正春氏 執筆の青春小説『虹のかなたへ』連載第2章始まる!その二 悲しみと苦しみ(3)

その二 悲しみと苦しみ(3)
 

座敷に入り、勧められて机の前に座った。目の前には父親が堂々と座っている。その机は真っ黒で大きく、立派であった。高級品なのだろう。
 間取りは、家と似ているようだ。だが、なんとなく雰囲気が違うのだ。何か、華やいだ気分が漂っている。
「ハイ、遠慮なくどうぞ、」
白いセーター姿の真実子が、お茶を置いた。真っ白で、花の模様付きの茶碗だ。横の小皿には分厚いカステラが載せられてあった。
『大変や! 失敗したらアカンぞ・・・』そう思って心を引き締めたが、余計に指先が震えた。
 父親は茶碗を取ると、静かに飲んだ。真実子も母親もゆっくりと飲んだ。手に取ろうとした時、緊張した左手の指が茶托に引っ掛かってしまった。とたんに茶碗が倒れて、お茶がザーッと流れた。
『アッ! しまった! 』咄嗟に茶碗を手で掴んだ。お茶が手にかかり
「アッ! 熱ちっっ! ・・・」
思いっきり顔をしかめた。とたんに
「まあ、大変! 」
真実子は弾かれたように立ち上がり、台所から布巾を持ってきた。
「すんません! ごめんなさい! 」
もう平謝りであった。頬のあたりが引きつって、冷や汗がドッと出た。
「火傷(やけど)していない? 大丈夫? 」
机を拭きながら、真実子が心配そうに言った。
「うん、なんともない。大丈夫や・・・」
初対面の父親に対して、なんたる不調法だろうか。頭の中は真っ白になってしまった。真美子が再びお茶を持ってきた。今度は失敗してはいけないと、グッと腹を決めた。
「すみません。頂きます」
今度は、そそうをしないように、と、ソッと両手を添えてお茶碗を持った。口に含むと、入れ立てなので焼けるように熱い。
「アッチッチッ! 」
思いっきり顔をしかめた。
 名誉挽回と、カステラをフォークで突いた。すると力み過ぎたのか、フォークの先が皿の底に当たり、ツルッとすべった。そのとたん、カステラが畳の上にポトリと落ちた。
「アッ! しまった! 」
慌てて手で拾って皿に戻した。見ていた父親は
「ウワッハッハッハ・・・」
と大声で笑った。真実子も母親も口に手を当てて笑っている。顔が真っ赤になるのが分かった。
『もう、この家に居てはいけない』と思った。


  

つづく


紅ズワイ、60分食べ放題行ってきました^^
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posted by はくすい at 13:37| Comment(0) | 虹のかなた
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