2019年02月07日

M35宮坂正春氏 執筆の青春小説『虹のかなたへ』連載開始!その一 異郷の空へ(97)

その一 異郷の空へ(97)
 

帰宅すると自分の部屋へ入った。出島商業での惨敗と古山先生の叱責が、心の中に重苦しくのしかかっていた。それと、強引な奈々子の行動が割り切れない気持ちとなり、複雑に交錯した。
『どうして勝てないのやろか』あれこれと負けた理由を詮索した。
『何故、奈々子が気になるのか』とも考えた。
 奈々子とは、早朝の光の中で出会った。その時の印象は強烈だった。合宿での、あの咳き込んだジュースの味も、忘れられないものだ。
『ボクには草山真実子と言う恋人(のつもり)がいるのだ。同じ剣道部で、苦しい稽古をやってる仲間なんや。卒業まで、ずーっと一緒や』と変な言い訳を考えた。だが、今も尚脳裏に彼女の姿が存在しているのを知って、心臓がドキリと音を立てた。そして何かしら深い淵に沈んで行くのを感じた。
「二郎ちゃん! 」
ふいに耳元で大きな声がした。ハッと我に帰った。机に伏せて眠っていたのだ。目を上げると、母の青白い顔があった。
「具合でも悪いの? 帰って来たと思ったら、黙って部屋に入るし、口もきいてくれへんやないの! 心配で心配で、死んでしまいそうやわ! 」
必死の表情の言葉に驚いた。そして、これほど母親に心配を掛けた自分が、申し訳ないと思った。
「お母はん、ごめんな。今日の練習試合で、メチャクチャに負けたんや。それで、向こうの先生からボロクソに言われたんや。悔しかったんや・・・。疲れてたし、色々考えてたら、寝てしもうたんや」
半分ウソを言った。滅多に嘘など言わないが、心配を掛けないように、と僅かばかり心配りをしたのである。
「そう。それやったらええけど・・・。あまり心配させんといてね」
その言葉を聞いて、半ば安心した様子だった。
 夕食に大好きなオムレツを作ってくれた。食卓を囲んだ時には、もう何事も無かったように笑い声が飛び交った。


  

つづく


南国の花ですひまわり
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posted by はくすい at 14:52| Comment(0) | 虹のかなた
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