2019年01月31日

M35宮坂正春氏 執筆の青春小説『虹のかなたへ』連載開始!その一 異郷の空へ(95)

その一 異郷の空へ(95)
 
外は寒くてたまらない。傘も差さずに校門を出た。道路に沿って歩くようになると、奈々子は二郎の横にピッタリと並んで歩いた。それを知ると、たちまち顔がカッと熱くなった。今、自分の横に奈々子がいる。そう思っただけで、胸がドキドキと鳴った。
『これはイカン。ヤバい! 』と思って左へ寄ると、すかさず横に付いてくる。もう一度左の方へ寄ると、また寄って来るのだ。
 とうとう道路の一番端を歩くはめになってしまった。この様子を見ていた真実子は、最初から気に食わなかったので、再びカチンと来たのだ。そして『負けるもんか! 』と、直接の行動に出た。
「ちょっと! 山ノ上さん! 話があるのよ! 」
そう言い乍ら、真実子は二人の間を無理矢理に割って入った。突然の強引な割り込みに驚いた奈々子は、額にシワを寄せ、あからさまに不機嫌な表情になった。そして、プーッと頬を膨らませながら、仕方なく右へ寄った。そんな奈々子を無視するかのように
「あのねえ。稽古納めのことなんやけど、何時が良いやろうか。年末はみんな忙しいようやし、先生にもお知らせしとかんとあかんしねえ」
大声で喋り始めた。稽古納めはすでに決定しているのに、なにを言い出すのかと思ったけれど、中へ入ってくれたので、内心はホッとしているのだ。
「アッ、そうやねん・・・。うん、うん・・・。そうや」
と返事を返すばかりであった。
 真実子の突然の実力行使で、奈々子は後ろへ廻るしかなかった。
『今日の海山高校は、お客様なんやから、仕方がないんよ』とあきらめた。そして、口を尖らせながら無表情で黙って歩き続けた。やがて駅に着くと、奈々子は身を翻して向かい合った。
「では、皆さんお元気で。また今度お会いしましょう。今日は寒い中、ありがとうこざいました」
と深く頭をさげた。そして無言で二郎に近づくと、パッと両手を使って左手を握った。それは一瞬の出来事であった。防具袋を担いでいるから、咄嗟に反応出来ないので見事にフイを突かれてしまったのだ。奈々子はすぐに手を離すと、クルッと振り返り、一気に走り出した。
 奈々子には、絶対的な自信があったのだ。真実子がいかに二郎と同じクラブであり、行動を共にしているとは言うものの、単なる同僚という関係でしかないだろう。
『草山さんとは違うのよ、アタシは。二郎さんとは、もっと親密な関係なんやからねっ! 』そう思っていた。
 合宿の目玉焼きから始まって、東和歌山の駅で待ち合わせて映画鑑賞に行った。そして、食事をしながらお互いの夢を語り合った。別れ際に駅で握手したのも、自信のひとつなのだ。また、手紙もちゃんと届けてある。だから二人は、お互いに心が通じ合っている、と信じているのである。だからこそ
『アンタなんかに、二郎さんの邪魔されてたまるもんか! 』という、真実子に対する強い敵愾心が起こっているのであった。 
 あの日、地区大会の会場で、奈々子は真実子に初めて会った。その時、真実子のスンナリとした顔を見て、言い知れぬ衝撃を受けたのだ。そして、気持ちが大きく動揺したのであった。
『草山さん。どんなことがあっても、アンタには、負けへんわよ! 』
心の中でそう叫びながら、学校へと走った。冷たい北風の為か、双方の目尻から涙が流れ落ちて、風に散った。)

  

つづく


春は近づいてきてます!
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posted by はくすい at 14:56| Comment(0) | 虹のかなた
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