2018年12月04日

M35宮坂正春氏 執筆の青春小説『虹のかなたへ』連載開始!その一 異郷の空へ(83)

その一 異郷の空へ(83)
 

 急に尿意を覚えたので、階段を下りて便所へ行った。用を足した後、通路の角の所で、出島商業のマネージャー・長岡奈々子とバッタリと出会った。
「あらっ、こんにちは。山ノ上さん、試合、どうやったん? 」
ニコニコと、満面に笑みを浮かべた奈々子に、突然に声を掛けられたので、一瞬ドキッとした。
「アッ・・・! ど、どうも。こんにちは・・・」
返事を返すと、急に顔がカーッと熱くなった。そして胸がドキドキと鳴り始めた。何故だか知らないがそうなったのだ。
「アタシのチームは、第五コートなんよ。今朝、取り組み表を見たら、海山高校の名前が出ていたからホントにびっくりしたわよ。でもアタシは、山ノ上さんに会えるかも知れへんと思うて、楽しみにしてたんよ」
奈々子は、両手を素早く取った。反射的に手を引いたが、間に合わずに握られてしまった。顔が益々赤くなり、心臓の鼓動が激しくなった。
「アノウ・・・。ボクたちは、一回戦で負けてしもうてん・・・」
口の中でボソボソと、しどろもどろの返事しか出来ない。奈々子はその声が聞こえているのかいないのか、ジッと目を見つめていた。
「あっちにウチのチームが居るんよ。先生も居てはるし、挨拶しといたらええのと違う? さあ、行きましょ」
そのまま、言いなりになった。反抗なんて、とても出来ないと思えたのだ。
「う、うん。ボク、挨拶に行きます」
奈々子はやっと手を離した。そして案内をするようにサッサと歩き出した。
 
  

つづく



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posted by はくすい at 15:37| Comment(0) | 虹のかなた
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