2018年11月27日

M35宮坂正春氏 執筆の青春小説『虹のかなたへ』連載開始!その一 異郷の空へ(81)

その一 異郷の空へ(81)
 

翌日より地区大会に向けての練習に入った。総掛かりで試合を想定した練習をするのだ。それは、試合規則を知る為に絶対的に必要なのだった。
 不田と井仲は試合は初めてなので、試合上の礼儀・作法の全てを一から教えなければならなかった。難しくはないのだが、重要な作法であるのだ。
「礼をする時は提(さ)げ刀よ。もう少し頭を下げて」
「前へ出る時は、帯刀(たいとう)して大きく三歩よ。下がる時は小さく五歩よ」
「蹲踞したら、もっと胸を張って! 」
「ホラ、そこの白線から出たら場外反則よ。二回の反則で相手の一本になるから、気をつけるのよ」
「ええか、竹刀を落とすなよ。それも反則やぞ」
部員たちは声を掛け合いながら頑張った。上級生の二人もナンの文句も言わずに、素直に指導に従った。
 そんな中で、ふと見た真実子の表情が、実に美しく見えた。端正な顔がキユッと引き締まり、ツンと伸びた鼻が光ってる。切れ長の瞳はキラキラと、闘志を秘めて輝いているのだ。
『うわっ! なんで、なんでこんなに綺麗なんや』思わずドキッとした。
 選手六人。そして池上恵と片山美紀を加えた八人は、大会の当日、道場に集合した。揃って大会会場のある和歌山市へ向かった。晩秋にふさわしい晴天となり、初陣を飾るべく、意気揚々として体育館へ入った。
 集合した選手の中で、紅一点の草山真実子の姿は一際光っていた。黒か紺色ばかりなので、白の胴衣と赤の胴は正しく一輪の花であった。視線が一斉に集中した。
「オイ、見てみい、女の選手がおるぞ! 」
「なんやて? 女やて? 女なんかが、試合に出られるんか? 」
「知るかいな! けど、ほら、そこに居るやないか」
「うわっ! ほんまや。女や。いつから女が試合に出てもええようになったんや。お前、知ってるか? 」
「知らんで。女が剣道をやるぐらいやから、不細工なんとちゃうか? 」
「そんなことあれへんわ。えらい可愛いで。ホラ、見てみいや! 」
突然の女子剣士の出現に大いに驚き、ざわめいて列が乱れた。だが、そんな騒ぎの中でも、彼女は平然として前を向いていた。


  

つづく


まったりと・・・
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posted by はくすい at 16:19| Comment(0) | 虹のかなた
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