2018年11月20日

M35宮坂正春氏 執筆の青春小説『虹のかなたへ』連載開始!その一 異郷の空へ(79)

その一 異郷の空へ(79)
 

三日ほどの後、安田先生の要望により、久々に面を着けた。それは、草山真実子との立会いを見たい、と言ったからである。真美子は初段である。だから、彼女と立ち会うには二郎が最適なのだ。
二人は稽古用の防具ではなく、自前のものを用いた。真実子は白の稽古着に紺の袴を着用し、胴は目にも鮮やかな赤色であった。長身のその凛々しい姿に、部員たちは目を見張った。
双方、九歩の間合いで向かい合い、礼をする。それから大きく三歩前進して竹刀を構え、蹲踞の姿勢を取る。そして立会いである。
先ず「切り返し」をしたのだが、真実子の竹刀を受けて、アッと驚いた。それは見事に素直な切り返しであった。高く、長い発声と共に左右のメンを打つ時、左手が頭上より高くあり、大きく振りかぶっているのだ。また、振り下ろす大刀筋が、まっすぐで、切れが良い。
『これはすごい・・・』彼は心の中でつぶやいた。
 稽古になると真実子の打ち込みは鋭く、何度となく打たれた。二郎はメン打ちが得意であった。だから、何度も打って出た。それに対する真実子の竹刀の先は、ものの見事に胴を打ち、コテを押さえたのであった。
 僅か、三分間ほどの短かい立会いであったが、面を外した顔面は、汗でぐっしょりと濡れていた。これだけの汗が出ると言うのは、真実子との立会いに、それ程までの緊張感と運動量があったのだ。
『これからは、良い稽古が出来るぞ・・・』心の中で唸った。
 安田先生は二人の立ち会いを見て、大いに満足であった。先生は実は格闘技である剣道が大好きなのである。試合を見ても緊張感があって楽しいし、打突がはっきりしているので勝負が分り易い。礼儀が正しくて端正である。それに、友人には出島商業の古山先生や、南野工業の辻川先生のような剣道の指導者が多い。それだけに、剣道の技に対する目が肥えているのだ。


  

つづく



北欧のパンケーキは巨大クレープでした黄ハート
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posted by はくすい at 15:26| Comment(0) | 虹のかなた
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