2018年11月01日

M35宮坂正春氏 執筆の青春小説『虹のかなたへ』連載開始!その一 異郷の空へ(75)

その一 異郷の空へ(75)
 


学校までの間、草山親子と離れて歩いたが、その途中に同級の苅川が横へやってきた。そして、車中で会った草山親子の事をひやかした。
「お前。なんで、あんな娘(こ)を知ってるんや。どんな関係なんや? 」
この男はうさん臭い奴だと思った。同級生だからと言って『お前』はないだろう。触らぬ神に祟りナシと言うものだ。
「いや、ちょっとね」
ポンと答えて横を向いた。苅川は『チエッ』と舌打ちをして離れて行った。
 授業中、ずっと草山真実子の事を考えていた。どのクラスに編入になるのだろう。自分も途中編入であったから、同じクラスになっても不思議ではないのに・・・、と繰り言を考えていた。
 放課後。いつも通り海山道場へ行った。稽古着に着替えてから、日課の床の雑巾掛けをするのである。掃除が終った時、何の前振れもなく顧問の安田先生が道場に来た。先生の後ろに誰か、女生徒が一人居るのに気が付いたが、先生の陰に隠れていたので顔が見えなかった。
「入部希望者が居たので、連れてきたぞ」
部員たちの前に立ち、先生は女生徒を紹介した。その女生徒を見てアッと驚いた。それはなんと、草山真実子であったのだ。
『ええっ! 草山さんが剣道をやるって? 女の子やのにホンマ・・・?』不思議だった。が、今にして思えば、お茶の間で正座している時、背筋をピンと張った姿が、それを物語っていたのだろうか。
「本日、転入してきた草山真実子君だ。一年生やけど、初段を持っておる。女やからと言うて、手加減せんでもええ。みんな仲良く、一緒に稽古すればええんや。家が山ノ上と隣同士らしいから、マァ、宜しゅう頼むよ」
家の隣だから宜しく頼む、とは妙な理屈だが、部員たちは喜んだ。指で数えられる程の少ない部員数だから、一人でも増えるのはありがたい。恵と美紀は両手を叩いて喜んでいる。
「草山さん。剣道をやってたやなんて、ボクは知らなんだでぇ。なんでこの前、言うてくれへんかったんや? 」
かすかな抗議に真実子は鼻に皺を寄せ、ペロリと舌を出した。
「ごめんなさいね、実はアタシ、昨日学校へ来た時、担任の先生に剣道部の事を聞いてみたんですよ。そしたら安田先生が、『剣道やったら、山ノ上がやってるぞ』と仰ったんです。アタシね、剣道は二の次にしょうと思ってたんですけど、先生からこの道場の事や、創部での山ノ上さんの苦労話しを聞かせて貰って、それやったら、どうしても剣道部の応援をしたいって思ったのよ・・・。そやから山ノ上さん、アタシを仲間に入れてくださいね! 」
「う、うん。ボクは別にかめへんけど・・・」
素っ気ない返事に
「山ノ上さん! それは失礼な言い方やわ。どうぞ、剣道部に入ってください、お願いします。でしょ? 」
恵が横槍を入れた。その通りなのだ。こちらから頭を下げてでも、真実子に入部して欲しい、それが本音である。

  

つづく


前回、夕日のヒントです(お分りかな?)
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posted by はくすい at 14:34| Comment(0) | 虹のかなた
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