2018年04月12日

M35宮坂正春氏 執筆の青春小説『虹のかなたへ』連載開始!その一 異郷の空へ㉙

その一 異郷の空へ㉙
 

着替えの肌着と弁当を風呂敷に包み、背嚢を肩に担いだ。そしていつもの時間に学校へ着いた。今日からは夏休みだから、生徒は誰も居ないのだ。
 正門は閉まっていたが、手で押すと、何の抵抗も無く静かに扉は開いた。校内に入り、道場へ向かった。空には雲が僅か浮かび、気持ち良く晴れていた。風も殆ど無く、道場の辺りはシンと静まりかえっていた。ただ、蝉の声だけが騒々しい。そして、無性に暑いのだ。
 この建物の前に立って良く眺めて見ると、実に堂々とした姿をしている。建物は高床式になっており、どこか歴史の本で見た、奈良の正倉院に似ている様である。横幅は広く、外側には廊下が巡らされていた。入口は階段を登った正面に一つあり、扉は左右に開く構造である。窓は左右にある。
 階段を登った。正面の扉へ続く階段である。扉に張られている板を良く見ると、沢山の釘で打ち付けられていた。道具箱を廊下に降ろし、釘抜きと金槌を取り出した。それを使って釘を一本づつ丁寧に抜いた。道具とは、実に素晴らしい働きをするものである。金槌と釘抜きにより、錆び付いていた釘が見事に抜けるのだ。 そして短時間で扉の板を取り外せたのだった。
次は取っ手の南京錠である。校長から預かった鍵を差し込んだ。そしてガチャガチャと動かしていると、ゴトッと音がして鍵の掛け金が外れた。鎖を外して、これでやっと扉を開ける用意が出来たのだ。
 流れる汗を片手で拭い、心を落ち付けて右の扉を強く静かに引っ張った。『ギギーッ』と不気味な音を発しながらも、意外にも軽く扉が動き出した。次は左の扉である。これも音は鈍いが軽く開いた。
 左右の扉を開け、ドキドキとする胸を押さえながら建物の中を見た。すると、先日、窓から覗いて見た時よりも意外に閑散としていた。雑然と荷物が散らばっているものの、相当に広いように思えた。
 ズック靴のまま、そっと中に踏み込んでみると、昔年のホコリが下からブワーッと舞い上がった。けれど、床の板張りは以外にも硬く、しっかりと足を受け止めてくれたのだった。
 戦前の建物だから、元来が丈夫にガッチリと造られているに違いない。だが相当にホコリ臭く、鼻の奥がツンツンと痛くなった。
 ゆっくりと内部を見渡すると、入口の正反対側に同様の扉があった。内側の掛け金を外し、先程と同様に左右に開けた。すると、正面から風が一度に吹き抜けた。永年に亘り、ジッと淀んでいた空気が一掃された気がした。


  

つづく



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posted by はくすい at 11:01| Comment(0) | 虹のかなた
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