2018年04月10日

M35宮坂正春氏 執筆の青春小説『虹のかなたへ』連載開始!その一 異郷の空へ㉘

その一 異郷の空へ㉘
 
その夜、夢を見た。そこは南海の広い海岸であった。雲一つ無い見事な青空が広がり、見渡す海原は静かに凪いでいた。その白い砂浜をたった一人で走っているのだ。だが不思議にもいくら走っても息が切れないのである。
 足を止めた処には松林が連なっており、その中程にまっ白な建物があるのに気付いた。惹き付けられるようにその建物に近付くと、正面の扉が音もなくスルスルと左右に開いた。そっと中を伺ったが、誰も居ないように感じられた。物音もせずに、シンと静まりかえっているのだ。中へそっと足を踏み入れて見ると、なんとそこは、広くてまっ白な道場だった。海辺の方の窓から陽光が差し込んでいる。その強い光のせいで、あたりが全く見えていないのだ。目を凝らして良く見ると、誰も居ないと思ったのに、ずっと向こうの方に人の影を感じた。近付こうと足を何度も運んだが、どうしたのか距離が一向に縮まらない。
 長い時間の末にやっと近付けた。姿を現したのは髪の長い少女であった。剣道の防具を着けた姿をしていて、スラリと背が高い。白色の胴と共に、全て白一色に統一されていた。こちらを向いてニッコリと、こぼれるような笑顔を見せている。黒く長い髪が肩にかかり、艶やかに光っている。
 その姿を見て、どこかで会ったような、と、ふと懐かしい気持ちになった。色白の顔はどこか母の面影が少しあるような、そんな気がしたのだった。
 少女は、静かな動作で道場の中程へ案内した。そして、手に竹刀を握らせた。少女は両手を高く広げた。そして高く澄んだ声で
「さあ、かかっていらっしゃい! 」
と挑発した。その少女に対して、闘志が全く湧かなかった。けれど、闘わなければならないような、運命的なものを感じたのである。
『よしっ、行くぞ! 』心を決めた。竹刀を中段に構えると精神を集中し、攻撃態勢を取った。打ってやるぞ! と激しく燃えて
「オリャーッ! 」
と気合いを掛けた。すると髪の長い少女は突然、フッとその姿を消してしまった。その瞬間、ハッと目が覚めた。それは夢だったのだ。
 頭の中は何故か妙にボンヤリとしている。まだ、あの霧の中に居るようで辺りはまっ白に見えていた。パジャマの襟元が、寝汗でぐっしょりと濡れていた。時計を見ると、まだ午前五時前であった。
 すぐに起きあがり、外を見た。いつも見る朝の風景が目前に広がり、雀の鳴き声があちこちに聞こえるのであった。
 台所の流しで顔を洗った。タオルで顔を拭きながらも、夢の中の出来事がはっきりと思い出されていた。あの白い少女は誰なのだろうか。考えてみても分かる筈がなかった。その物音を感じたのか里子が起きて来た。
「アラ、二郎ちゃん。今日は早いのね。いつもの時間でええんでしょ。それとも、早く出掛けるの? 」
「ううん、ちょっと早う目が覚めただけなんや。急がんでもええよ」
そう言いながら大きく伸びをした。先程の夢は、何を意味するのだろうか。

  

つづく


何焼きでしょうか?
IMG_4176[1].JPG



正解はバッチャン焼ですわーい(嬉しい顔)

posted by はくすい at 12:11| Comment(0) | 虹のかなた
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: