2020年06月09日

M35宮坂正春氏 執筆の青春小説『虹のかなたへ』連載第2章始まる!その二 悲しみと苦しみ(74)M35宮坂正

その二 悲しみと苦しみ(74)
 
一方、真実子は里子としばらく話し合っていたが、医師の回診があったので病院を辞したのだった。今日は一人なので、行く宛もない。
「そうだ、小父さんの所へ寄って行こう」
半月前に二郎と訪れたばかりだが、再び行っても悪いはずはないのだ。
 道を尋ねながら、地下鉄の本町駅まで歩いた。地下鉄に乗り、淀屋橋まで行った。地上に出ると、先日行った市役所と広い御堂筋が見えた。少しばかり懐かしい気持ちになりながら、市電の停留所へ向かった。大阪港行きの路面電車はすぐに来た。少し走ると右手に堂島川が望め、風景も良くなって気分は爽快であった。ものの十分も経たないで土佐堀の停留所に着いた。そこから病院まで、迷うはずもなかった。
 トコトコと階段を登り、病室に入って武二郎のベッドに近付くと
「小父さん。こんにちは! 」
明るく声を掛けた。見ると、武二郎はこの前と違ってベッドに腰を掛けていた。両足に巻いた包帯が痛々しいが、ベッドの上でなく、横に腰を掛けていたのだ。これには驚かされたのであった。
「おう! 真実子ちゃんやないか。今日はいったいどうしたん? 二郎と一緒じゃないのか? 」
突然の来客に驚き、里子と同じ質問をした。それを聞いてプッと苦笑した。
『仲の良い夫婦なんやねえ。同じことを言ってるワ』そう思った。
「小父さん、ごめんなさいね。二郎さん、今日はアルバイトなんですよ。さっき、小母さんの所へ行って来たんです」
真実子は正直に答えた。
「そうか、それはスマンな。わざわざ来て貰うて・・・。あいつも無理をしたさかいな。よう頑張ったんや。けどな、よう見てや。ホラ、ちょっとだけ歩けるようになったんやで。そやから、ここに腰掛けてるやろ! 」
嬉しそうに顔をゆるめながら、真実子に横の松葉杖を指した。
「えっ! そうなんですか・・・。それは良かったですねえ」
彼女は驚いた。ついこの前までは立つことさえ出来なかったのに、今日は松葉杖を使って少しでも歩けるなんて、たいした進歩である。
「ちょっとづつ歩く訓練をしてるんや。あの、リハビリとか言うやつやな」
「小父さん、今日は来てよかったワ。アタシ、とっても嬉しいのよ・・・。早く帰って、二郎さんにちゃんと報告しますわね」
真実子は手が震えるほど嬉しかったのだ。一刻でも早く、二郎に伝えなければならない、と思った。
「小父さん、アタシ、もう帰ります」
その言葉に武二郎は驚いた。
「えっ! いま来たばっかりやのに、もう帰るんか? 」
「ハイッ。今日、アタシが見たこと、二郎さんに全部お話します。だからごめんなさいね。お茶も入れないで」
彼女は嬉しさを隠し切れなくなって、小刻みに体を動かしながら言った。
「そうか、それはスマンな・・・。二郎に宜しく言うておいてな」
「ハイ、ありがとうございます。それでは失礼します」
真実子は深々と頭を下げた。

 
  

つづく

昨年は刈られて見れませんでしたが、今年は見事に❣
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気まま旅『 その弐参 広島県 その三 』M38泉谷忠成

『 その弐参 広島県 その三 』


私の唯一、単身赴任先が広島県福山市です。福山市は大きな町ですが、一歩街の外に出れば自然がいっぱいの町。
自転車で街はずれを走っていると、道端に夏はイチジクの木、秋には柿の木(自然に自生)、完熟のイチジクは最高、誰にも怒られる人はいません。
波止場に行けばミミイカが入れ食いでした。
福山の友人と海岸へ、そこでは投網を初めて経験しました。その友人に注意されたことを覚えています。それは一回投網をしたところは避けて、ずらしていく事、魚たちはよく覚えていて一度投網されたところには戻ってこないそうです。

住んでいたのは福山城のお堀端近く、春には桜の名所になっていました。 
家内が来たので、案内がてら車で鞆の浦の方に行く事にしました。
岬の灯台、常夜灯まで行くのに、昔の商家に漁師の家の雰囲気はいいのですが、車が一台ようやく通れるほどの路地裏のような細い道もあり、逃げだしそうな気持でやっと岬の先まで行くことが出来ました。
古い料理旅館風なところの2階で対面の仙酔島を眺めながらの食事でした。
庄家の「桝屋清右衛門宅」も通りすがりで眺めてきました。
幕末に起こった「いろは丸事件」のときに龍馬らが滞在していた場所と言われています。
宮城道夫の「春の海」は 瀬戸内の景勝地、鞆の浦の美しい風景をイメージしたともいわれていますが、諸説あるようです。



福山市鞆の浦
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posted by はくすい at 15:57| Comment(0) | 旅だより