2019年12月10日

M35宮坂正春氏 執筆の青春小説『虹のかなたへ』連載第2章始まる!その二 悲しみと苦しみ(43)

その二 悲しみと苦しみ(43)
 

四月二十日過ぎであった。長岡奈々子から手紙が届いた。つい先日も手紙を貰ったのに何故だろうと思った。
 『こんにちは。山ノ上さん、お元気ですか? 突然こんな手紙を届けてごめんなさいね。
 私は二郎さんにお会いしたいのですが、仲々会えません。でも来月、五月に会えるから楽しみにしています。何故って? 今度、海山高校へ私たちが行く事になっているのよ。去年は二郎さんたちが来たでしょう。だから今度は私たちがお邪魔するのよ。このあいだ、先生同士が相談して決めたって、古山先生からお知らせがありました。私はマネージャーだから、ニュースが一番早いのよ。
 なにか、お土産を持って行きたいけど、なにが良いのかしら。二郎さんの好きなものって、なんなの? 私、知りたいわ。この前の時には教えてくれなかったでしょう?
 二郎さんが作ったという道場はどんな道場なんだろうって、私、とても興味があるんです。去年の夏休中、たった一人で毎日毎日お掃除をしていたんですってね。先生が感心していらしたわ。そんな二郎さん、私はとっても尊敬しています。奈々子はもっと二郎さんのことを知りたいのよ。草山さんには負けたくないもの・・・。あっ、いけない、あんまり夜遅くまで起きていると叱られるので、ペンを置きます。会える日を楽しみにしています。おやすみなさい。
         山ノ上二郎さんへ           奈々子より』
いったいこれはナンなのだろう。手紙なのは間違いないが、何を言いたいのかと不思議に思った。練習試合の件は知らなかったけれど、それを知らせるだけではない内容である。『草山さんには負けたくない』と言うのは、どんな意味なのだろうか。

 「ねえ、小父さんの具合はどうなの? 経過は良いの? 」
バスの中で、真実子が尋ねた。
「うん、おおきに。だいぶ順調やて、お母はんが言うてた」
「あ、そう・・・。それで、お見舞いには行ってきたの? 」
「ううん、まだ行ってないねん」
「えっ! まだ行ってないの! そんなん、アカンやないの。あ、そうやわ、アタシも行くわ。ねえ、一緒に行きましょうよ。良いでしょ」
「う、うん。別にかめへんけど・・・」
真実子と一緒に父を見舞うなど、考えてもみなかった。
「何時が良いのかな・・・。ねえ、二郎さんはどうなの? 」
「そうやなあ・・・。日曜日はアルバイトがあるから、祭日がええねん」
「そやったら、二十九日の天皇誕生日やね。そう決めましょうよ、ねっ!」
「う、うん。分かった・・・。そうするよ」
剣道では確たるリーダーであっても、私的な問題になると、彼女には頭が上がらないのだ。殆どがの言いなりになってしまうのだった。四月二十九日はすぐそこであった。

  

つづく

カンカ(コマイ)を燻製しました^^
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気まま旅『 その壱四 鹿児島県 その一 』M38泉谷忠成

『 その壱四 鹿児島県 その一 』 




大阪住吉区の住吉大社内に「誕生石」があります。平安時代末期から鎌倉時代にかけての武将、島津忠久公の事。
その由来は、以下住吉大社内の説明文
「丹後局は源頼朝の寵愛を受けて懐妊したが、北条政子により捕えられ殺害される所を家臣の本田次郎親経によって難を逃れ、摂津住吉に至った。このあたりで日が暮れ、雷雨に遭い前後不覚となったが、不思議なことに数多の狐火が灯り、局らを住吉の松原に導いてゆき、社頭に至った時には局が産気づいた。本田次郎が住吉明神に祈るなか、局は傍らの大石を抱いて男児を出産した。これを知った住吉の神人、田中光宗は産湯を出して湯薬をすすめて介抱し保護したという。是を知った源頼朝は本田次郎を賞し、若君に成長した男児は後に九州平定の為、薩摩・大隅二ヵ国をあてられた。」
若君、いわゆる島津家の初代藩祖島津忠久公、雄大な桜島を望む「仙厳園」は初代島津藩の屋敷庭園でもありました。
大阪〜九州・鹿児島 深い縁で結ばれているようですね。




大阪住吉大社内にあります
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鹿児島仙厳園
鹿児島仙厳園.jpg
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2019年12月05日

M35宮坂正春氏 執筆の青春小説『虹のかなたへ』連載第2章始まる!その二 悲しみと苦しみ(42)

その二 悲しみと苦しみ(42)
 
駅で汽車に乗った。
「今日はキツかったけど、アタシはあれで良かったと思ってるわ」
「そうや、ボクもそう思ってるよ。今迄が甘すぎたんや。あれでは試合に勝てるワケがないもんな。出島商業の合宿もあれぐらいやったし、よその学校より遅れている分、取り戻したいな」
「そうよね。アタシ、山ノ上さんに負けんように練習するから、お願いね」
「うん。お互いに切磋琢磨するんや」
バスに乗り換えると、睡魔が襲ってきた。座席にゆられて船を漕いでいるのを見て、真実子はクスクスと笑った。もう桜の花は満開であった。

 あくる日。学校までの道すがら、少し前の方に防具袋を担いでいる男の姿を見つけた。それが剣持先生だと気付いたので、足早に近付いた。
「先生、おはようございます。荷物、ボクが持ちます」
竹刀袋に手を掛けて、防具を受け取った。
「やあ、山ノ上か。おはよう。スマンな」
先生と並んで歩いた。その後ろに真実子と苅川が続いた。
「お前、大阪の泉川高校から来たと言うてたなあ」
「ハイ、そうです。去年の六月に来ました」
「そうか、俺は川下先生に会うたことがあるぞ。教職員の近畿大会で試合をやったんや。強い先生やったな」
「えっ! そうなんですか・・・。知ってはるんですか」
この先生は、そんな大会に出場するほど強いのか。そして、その試合の結果はどうだったのか。
「あの先生が教えてるから泉川高校は強いんや。出島商業も古山先生がいてはるから、あれほどまでになれたんや。俺は安田先生から、お前と草山のことは聞いていたんやぞ。昔の強い海山高校を知っているから、お前たちを指導してみようと思うたんや」
「ハイ、ありがとうございます。先生は昔の海山高校のこと、知ってはるんですか? 」
「おお、知ってるぞ。強かったな。俺の同期で吉雪という男がおってな、コイツが強うて、対抗試合で俺は三回も負けたんや。三年生になってから四回目でやっと勝てたなあ・・・。昔の話や」
もっと話したかったけれど、学校はもう目の前であった。
「先生、防具を道場に置いてきます」
「おお、そうか。すまんな」
一礼して駆けだした。
『やっぱり、剣持先生はすごいんや。ボクは必ず付いて行くぞ! 』走りながら、そう思った。

  

つづく

母校の公園も銀杏の絨毯で冬らしくなってきました
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posted by はくすい at 11:18| Comment(0) | 虹のかなた