2019年10月24日

M35宮坂正春氏 執筆の青春小説『虹のかなたへ』連載第2章始まる!その二 悲しみと苦しみ(32)

その二 悲しみと苦しみ(32)
 

帰ると手紙が届いていた。それは長岡奈々子からであった。
『拝啓。三月に入り、少しは寒さが和らいできたような気がします。近所の梅の並木には花が満開に咲き、とても良い香りがしています。私はこんな梅の花が大好きでなんす。
 山ノ上さん、お元気でいらっしゃいますか。この間の新人戦の時はブロックが違っていたし、昇段試験の時は風邪を引いてしまって会場へは行けませんでした。少しぐらいの熱やったら無理をしてでも行きたかったのですが、熱が三十九度も出てしまったのよ。それで歩くことも出来ませんでした。私はそんな自分が悔しくて、一人で泣いていました。せっかく、貴男に会えるチャンスだったのに、それを自分で潰してしまったんですもの、本当に情けない話だわ。
 話は変りますが、あのう・・・、実はまたお願いがあるのです。来月の一日から和歌山市の美術館で、山下清画伯の展覧会が開催されるんです。その展覧会に私を連れて行って欲しいのです。子供の頃、施設で学んだ清少年が放浪の旅を続けて立派な画家となった。その作品を貴男と一緒に見たいのです。無理なお願いとは分かっていますが、ぜひお願いします。それから、地区大会や練習試合で、貴男に大変いやな思いをさせてしまった事、心から深く謝ります。本当にごめんなさい、ごめんなさい。
 この前の映画の時と違って、今度は日時を決めておりません。ですから、どうぞお手紙をください。貴男のご都合に合わせます。
 私はいつまでも待っています。ぜひぜひお願いします。
     山ノ上二郎様            奈々子より』
読んでいて顔が熱くなった。当然、心臓もドキドキと鳴っている。
 『山下清』と言えば、現在の奇跡とも言える人物だ。日本のゴッホとも称され、その作品は傑出している。雑誌や図鑑などの印刷物ではない、本物の作品を自分の目で見たいと思っていたのだ。こんなチャンスは滅多とはないだろう。奈々子に誘われたのは嬉しいが、現在の環境は、そんな展覧会に行けるほど甘くはないのだ。いかに父や祖父の病状が好転しているとは言え、
母も必死で働いているのに、自分だけが遊ぶ訳にはいかないのだ。
『女の子に恥をかかせてはいけない』との言葉を思い出したから、返事を出そうと思った。断わるのに嘘を書いてはいけないが、本当の事を書けば良いのだ。それが相手に対する誠意だと思った。
『前略、ご免ください。お手紙を戴きありがとうございました。貴女に報告をします。実は僕の家族なのですが、父は半月前に交通事故に遭って両足の骨を折り、病院に入院しています。母がその父の世話をする為に大阪へ行っているので、今僕は一人で生活しています。ですが、何の不自由もありません。それに、祖父も重病で入院しているのです。ですから、貴女からお誘いを受けたからといって、僕一人だけが遊びには行ける状態ではないのです。
 山下画伯の作品は僕も大好きで、ぜひ見たいとは思っています。お誘い頂いのは大変嬉しいのですが、残念ですが、今回はお断りをさせて頂きます。また今度、機会がありましたら、その時は宜しくお願いします。早々
 長岡奈々子様            山ノ上二郎』
これだけの手紙を書くのに二時間以上も掛った。興奮しているのか、なぜか手が小刻みに震えて文字が乱れた。それに簡単な文字をよく間違えたのだ。 彼女はこの手紙を読んでくれるだろうか。いや必ず読んでくれるだろう。だが、どんな表情をするのだろうか。

  

つづく


ハロウィンパーティーで使うスコーンを2種焼いてみました^^
キャラメルナッツチョコとサツマイモ・カボチャ
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posted by はくすい at 15:24| Comment(0) | 虹のかなた

気まま旅『 その壱六 京都 その二 』M38泉谷忠成

その壱六 京都 その二 』 



久しぶりに京都の町を散策してきました。
以前は車でよく行ったのですが、駐車料金を気にしたり、また元の所へ戻らなければならないなど、何となく気のあせり、落ち着かない小旅行を繰り返していました。今回は敬老パスもあり、地下鉄・京阪電車で心豊かに京都散策に出かけました。

まずは「ねねの道」を行ったり来たり、更に「ねねの小径」を、更には念願のソフト・抹茶スイーツを若い人たちに囲まれ、庭を眺めながら二人で古都京都の風情を楽しみました。ご存知だと思いますが、「ねね」は豊臣秀吉の正室(北政所)秀吉の死後、余生を送ったのがここ。更に石畳の道を丸山公園に、以前来た時は春の枝垂れ桜が満開、その素晴らしさを思い浮かべての訪問散策であっただけに夏の丸山公園には少しガッカリが本音でした。更に祇園から錦市場へ、もう足はぐたぐた。
市場で好みの物を好き勝手に選び、鴨川四条河原町の橋の下で涼みながら楽しみました。
最後はやはり食ですね!家に帰って驚きました、なんと歩いたのは16000歩でした。

次回はやはり電車で京都国際マンガミュージアム(一度行ってみたい)そして「哲学の道」コースを考えています。




祇園
祇園.jpg




ねねの道
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posted by はくすい at 15:14| Comment(0) | 旅だより