2019年03月26日

M35宮坂正春氏 執筆の青春小説『虹のかなたへ』連載第2章始まる!その二 悲しみと苦しみ(5)

その二 悲しみと苦しみ(5)
 

そうこうしている内に、真実子が料理を並べ始めた。
「ウチの味付けは広島風やから、お口に合わないかも知れへんねえ」
チラリと二郎の顔を覗き込みながら言った。だけど先程から母親の姿が見えない。何処かへ行ったのだろう。
「大丈夫やで。ボクは好き嫌いがないんで、なんでも食べるよ」
いそいそと、用意をしている彼女に言った。
「そうお。それやったら嬉しいわ・・・」
大きな机の上に所狭しと並べた料理は、祖父の家よりも立派に見えた。
「スゴイ料理やねえ。これ全部、家で作ったん? 」
「ええ、そうよ。アタシとお母さんとで作ったのよ。上手でしょ」
「ふうん、すごいなあ・・・」
彼女は料理が得意なのだ。
 やがて母親が姿を現わした。やはり、出掛けていたようだ。
「用意は出来たようね。でも、もう少し待ってね」
「おお、ええぞ。その代わり、お銚子を頼むよ。早うしてくれ」
「ハイハイ、分かりましたよ」
『なに? 待つ? 待つって、誰を待つのやろうか』僅かな疑問が湧いた。
 母親がお銚子を持って来ると、父親は自分の盃に注いだ。そして彼の盃にも注いで、飲むように勧めた。
「いえ、ボクは学生なんやし、飲めないんです」
「まあ、今日は正月や。お祝いやからええやろ。一杯だけ、いこ」
乾杯するように盃を差し出した。助けを求めて真実子に目を向けた。すると『どうぞ。お飲みなさい』と、目で合図をした。少々迷ったが父親に悪いので、盃を挙げて軽く礼をした。口に付けようとした時、玄関の方で
「ごめんください」
と声がした。それは聞き覚えのある声であった。母の里子であるようだ。
「いらっしゃい。さあどうぞ」
母親が案内に出た。
「失礼します。呼んで頂いてすんません」
部屋に入ってきたのは、二郎の両親であった。
「せっかく二郎さんに来て頂いたのやから、ぜひにって、お呼びしたのよ。お隣同士なんやし、たまには良いでしょ」
真実子の母親の、温かい心遣いである。
「初めまして、山ノ上です。宜しくお願いします。突然にご招待を頂きましてありがとう御座います。何も用意をしてないんですけど、これをどうぞ納めてください。大阪から持ってきた、灘の生一本です」
武二郎は、白い紙で包んだ一升瓶を差し出した。
「あ、どうも・・・。初めまして草山です。もう固い挨拶は抜きにしましょうや。さあ、どうぞこちらへ」
父親は席を勧めた。それから、和やかに会食が始まった。
「草山さんは、広島の尾道でしたね。私は大阪なんですよ」
「お互い、遠い処から来ましたなあ。でもここは住み易いですよ。モノも結構安いですからね」
「造船っていうお仕事も、造物(もの)が大きいだけに、苦労も大きいでしょうね。体力が勝負かも知ませんなあ・・・」
「いやいや。機械化が進んでいますし、見た程の苦労はありませんよ」
「そうですか。お嬢さん、良い娘さんですなあ、べっぴんで可愛いし・・・」
「ウチの娘(こ)より二郎君の方がよっぽど宜しいで。ええ息子さんや」
真実子の父親は先程の事を思い出して、一人でクスッと笑った。
「ウチは、男ばかり二人なんですよ。一人は東京に住んでいるんですわ」
「よろしいなあ・・・。儂んとこは女二人なんですよ。上はもう嫁いで、孫が一人いますけどねえ」
「へえっ! お孫さんでっか、宜しいですなあ・・・。まァ、お互いに将来が楽しみですわ」
二人父、武二郎と修は初対面にもかかわらず、ウマが合った様子で、話が良く弾んだ。そして、お酒もこの上なく良く進んでいた。
二郎は真実子を相手にして、剣道の話に花が咲いていた。
「試合には勝たなければ駄目よ。負けたらナンにもならないわ」
「必ず、先に打って行くのよ。攻撃は最大の防御なのよ」
「人間が相手なのよ。どんなに強い相手でも、必ず弱点がある筈なんやわ。それを先に見つけたらええのんよ」
大人しそうな彼女の口から、気の強さを示す言葉がポンポンと飛び出してきた。そんな強気の真実子がとても好きになった。そして、こんな女子部員を誇りに思えるのだった。
 真実子の父・修から勧められるままに飲んだ十杯ほどのお酒が廻ってきたのか、見える物がゆらゆらとして来た。そしてなにか、フワフワと浮いた良い気分になって来たのだ。正面の真実子が妙に柔らかくふんわりとして、とても美人に見えている。何故なのだろうか・・・。
 
  

つづく


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2019年03月19日

気まま旅『 その壱五 神奈川県 二の一 』M38泉谷忠成

『神奈川県 二の一』

横浜市内ではまず山下公園、赤レンガ倉庫街、外人居留地区(建物のアクセントカラーが印象的)、帆船日本丸、横浜人形の家(赤い靴、はーいてたー、女の子♪♪♪)などなど、さすが感度UPの街。更に横浜中華街でお食事ですね。
私は中国料理の発祥ともいわれる中国蘇州で四川料理を頂いたのですが、その味(あっさり、すっきり)が忘れられず、横浜中華街で四川料理のお店に行きました。ところが見た目も味も違うのです。
お店の方にその事をお聞きすると、今は求められるものも変わってきているのです。
本来の四川料理を提供するお店は皆無になっている、私達も寂しくなっているのですよ、との事でした。

横浜市内の中心部に位置する三渓園は、生糸貿易などによって大きな財を成した岐阜県出身の原三渓によって開園されたそうです。前持っての知識もなく、突然訪問した私には大きな驚きでした。
市内の中心部に何でこれだけ大きな庭園があるんや、それも茶室や五重塔など各地からそのまま移設、贅の限りを尽くしての庭園でした。

話変わって、当社は横浜市内に街づくりを想定した郵便局・銀行・ホテル・高級外車販売などを有する超ビッグなショッピングセンターを造りました。
オープン時の売り物では水槽に入ったままの(ビッグなクエ、九州ではアラと呼んでいます)泳いでいる魚(クエ)をそのまま販売、お値段も超ビッグ、さすがに見世物で終わり買っていただくことが出来ませんでした。



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M35宮坂正春氏 執筆の青春小説『虹のかなたへ』連載第2章始まる!その二 悲しみと苦しみ(4)

その二 悲しみと苦しみ(4)
 

「すんません。ボク、もう帰らして貰います。また今度・・・」
立ち上がろうとすると、真実子が
「ううん。もっとゆっくりして頂戴。まだナンにも、お話ししてへんのよ」
真顔で言った。
「ねえ、お父さん。ちょっと早いけど、ごはんにしましょうよ」
「ああ、そうやな。そうしてくれ」
思い掛けない言葉に驚いた。
「お父さん、ちょっと」
父親は真美子と小声で話していたが、すぐに机の前に座り直した。
「山ノ上君は、剣道初段やったね」
「ハイ、そうです。でも、小父さんも強いんでしょ? 」
「儂か? 儂はまだ四段や。もう半年ほど、稽古しとらんな」
「そうですか、四段なんですか。すごいですねえ・・・」
流石だと思った。手の届かない高段位である。しかし『まだ四段や』とは、どういう意味なのだろうか。
「四段やけど、本当はもっと実力があるのよ。お父さんは、昇段試験を受けてないだけなのよ」
台所から真実子が言った。こんな四段の大人に稽古を付けて貰えたら、どれほど進歩出来るであろうか。考えただけでも嬉しくなってきた。
「小父さん。もし時間がありましたら、ボクたちに稽古を付けて頂けませんか。お願いします」
「そうやな、儂も久し振りに稽古してみたいな。真実子の相手も長いことしてないしな。やってみようか」
「ぜひお願いします。いつでも結構です」
「うん。考えておこう」
「山ノ上さん、お父さんを相手にしたら恐いわよ。突き倒されるわよ」
「オイオイ。そんなん言うなよ、二郎君が怖がってしまうやないか」
「でも本当よ。『ツキの草山』って尾道では有名やったのよ! 」
彼は驚いた。尾道で有名だったとは、思いもよらなかった。

  

つづく

頭が光ってました〜^^
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