2018年12月13日

M35宮坂正春氏 執筆の青春小説『虹のかなたへ』連載開始!その一 異郷の空へ(85)

その一 異郷の空へ(85)
 

海山高校の面々は、出口で手持ち不沙汰で待っていた。
「やあ、ごめんごめん。夏にお世話になった出島商業の先生に、挨拶に行ってたんや。遅うなってすんません」
とみんなに謝りながら、付いてきた奈々子を
「出島商業のマネージャー、長岡さんです」
と紹介した。奈々子は
「こんにちは。出島商業剣道部の長岡です。宜しくおねがいします」
ニッコリと微笑みながら、深々とおじぎをした。
「こんにちは。不田です」
「どうも。井仲、言いますねん」
「池上です」
「マネージャーの片山です」
「二年生の浦山です」
「同じく石坂です」
一人づつが自己紹介をして、最後に
「草山です」
真実子が名前を告げた。笑顔を振りまいていた奈々子は、真実子の顔を見たとたん、一瞬に表情が固くなった。真実子もまた、奈々子を見てハッとするものを感じた。二人の視線がまともにぶつかり合った。
『アッ! この子は、山ノ上さんに惹かれているわ』と真実子。
『この子は危険やわ・・・。二郎さんには邪魔よ! 』と奈々子。
お互いに譲らず、見つめ合ったままになった。気が高ぶったのか奈々子の手がブルブルと震え出した。二人を見て『これはいかん! 』と、急いで二人の間に割って入った。
「さあ、もう帰ろうや。長岡さん、おおきに」
そう言いながら、真実子の背を帰る方向へ押し出した。
「さよならっ! 」
振り向きざまに二郎の顔をチラリと見て、奈々子は走って行った。その場に妙な、気まずい空気が漂った。
「帰りましょ」
促すような真実子の声に、全員がノロノロと外へ出た。
 まだ激戦が続いている体育館を後に、駅までの道を黙って歩いた。初戦敗退のショックが、彼らの気分を重くしているのだ。それに加えて、真実子の胸中には先程の長岡奈々子の出現が、大きな陰を落としていた。


  

つづく

 

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気まま旅『北海道編 その五』M38泉谷忠成


知床では五湖は勿論、その先の最果ての地まで行ってきました。写真に写っている橋のその先は通行止め立ち入り禁止、当然足を片足入れて最果ての地まで行ってきました。

北海道で意外に名前が上がってこないところで私の好きなところと言えば、屈斜路湖があります。湖岸露天風呂は自然の造営で全て無料、私の確認では3ヵ所ありました。
湖岸を手で掘れば湯が湧いてくる、白鳥と戯れる、見事な紅葉、オートキャンプをすれば最高なところです。

白鳥飛来で名が上がるのは、屈斜路湖・温根沼・尾岱沼・トウフツ湖・大沼公園・ウトナイ湖・クッチャロ湖などがありますが、ウトナイ湖・クッチャロ湖は行けてません。
北海道では屈斜路湖の白鳥に勝る所はないと思います。





知床最果ての地  
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屈斜路湖の白鳥
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屈斜路湖の露店風呂
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posted by はくすい at 13:26| Comment(0) | 旅だより

2018年12月06日

M35宮坂正春氏 執筆の青春小説『虹のかなたへ』連載開始!その一 異郷の空へ(84)

その一 異郷の空へ(84)
 

奈々子はプログラムを見て、海山高校の参加を知ったのだ。その時、飛び上がって喜んだ。和歌山で会った時は、これから剣道部を創ると言う段階であった。それなのにもう、試合に出て来るなんて、すごい実行力がある人物なのだと、感心をしたのだ。
 
すぐに二郎を捜した。観客席の上から会場を見渡し、海山チームが見当たらないと分かると、今度は入口の方を注視した。そして、二郎たちが入って来るのを、しっかりと確認したのだった。
 試合は出島商業の方が先であった。彼らは一回戦に勝利し、階上の席へ引き上げた。そして海山高校の試合を見ていたのだった。
 
奈々子は二郎がチームを離れたのを知ると、その後を追って階段を下り、通路で偶然に会ったように演出をしたのである。
 観客席の一角に、出島商業高校の選手たちと古山先生が居た。防具を着けているのは、次の試合が近いのだろうか。
「こんにちは、山ノ上です。先生、合宿の時にはお世話になりました。ありがとうございました」
ペコリと頭をさげて、古山先生に挨拶した。
「おお、山ノ上か。さっきの試合は残念やったな。ここから君たちの試合を見せて貰ったで。あの次鋒の女の子、仲々エエやないか。君やあの子は負けたけど、稽古次第ではもっと良くなると思うぞ。頑張れよ」
古山先生はやんわりと、ねぎらいと激励の言葉をかけた。
「ハイ。ありがとうございます。頑張ります」
恐縮しながら答えた。その横では、合宿で仲良くなった山渕、坂寺、角山の三人も、ニコニコとして見ていた。
「なあ、山ノ上。試験が終ったら、儂ンとこと練習試合をやれへんか? ウチへ来てくれたらええんや」
試験とは、期末考査である。今、井の中の蛙と同様で、七人だけで練習しているのだから、進歩がないのだ。他校の先生や部員たちと練習出来るのは、願ってもない話だ。
「ハイ。安田先生に相談して、必ず返事をさせて貰います」
そう言いながら、他の部員にも軽く会釈した。
 ふと、奈々子を見ると、目が合った。またもや顔がカーッと熱くなった。何故彼女だけにはこうなるのか、不思議だった。愛くるしい顔立ちの、学生服姿に弱いわけではないし、胸の膨らみに気を取られている訳でもないのだ。この場から早く離れたいと思った。
「それでは先生、失礼します」
先生にもう一度深くおじぎをし、選手たちにも頭をさげた。そして自分のチームの方に戻ろうとすると、奈々子は
「山ノ上さんを送ってきます」
そう言って、後から付いて来た。

  

つづく


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posted by はくすい at 15:53| Comment(0) | 虹のかなた