2018年07月05日

M35宮坂正春氏 執筆の青春小説『虹のかなたへ』連載開始!その一 異郷の空へ㊾

その一 異郷の空へ㊾
 

次の日。前日と同様に起床した。外へ出ると、良く晴れているが、強い光はなかった。道場を裸足で歩くと、冷たい板の感触が足の裏に心地良い。
 昨朝の再現を期待した訳ではないが、何か気を惹かれたのだ。人の気配など全く感じられない。射し込む光もずっと鈍くて、眩しくはなかった
食堂のテーブルには、四角いお盆に載った朝食が並んでいた。昨日と同様に、二列目の端に座ろうとした時
「山ノ上さん。こっちよ! 」
女性の声がした。驚いて奥の方を見ると、あの白い女の子、長岡奈々子が手招きをしていた。
『どこでもええんや』と思ったが、彼女が示した列の端へ行った。
「さあ、どうぞ! 」
ニっコリと笑みを浮かべて、席を勧めた。
 料理はハムエッグである。皿を見ると、何かボリュームが大きかった。目玉焼きは卵が二つだし、ハムも四枚だ。向かい側の皿をソッと見た。そこには卵一つとハムが二枚だった。
 食べ始めていると、奈々子が大きなヤカンでお茶を注ぎに来た。そこで
「あのう・・・。これ・・・」
目で示すと、彼女は『シッ! 』と唇に指を当て乍ら一瞬
「これはアタシが焼いたのよっ! 」
肩を抱くような仕草で、耳元に囁いた。
「えっ! なんで? 」
驚く顔を尻目に、そ知らぬ顔でお茶を注いだ。そして顔を向け右目でウインクをした。それを見たとたん、カーッと顔が熱くなった。額から汗が噴き出し、心臓がドキドキと鳴り始めた。奈々子は黙ってその場を離れた。
 こんな彼女の怪しい行動を、誰も気付かなかったのだろうか。


頂いたウメイロで刺身、アラ汁、兜焼 美味でした!(内臓と鱗を取って1日寝かしてから調理)
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posted by はくすい at 16:04| Comment(0) | 虹のかなた