2018年06月21日

M35宮坂正春氏 執筆の青春小説『虹のかなたへ』連載開始!その一 異郷の空へ㊺

その一 異郷の空へ㊺
 

その妖精は立ち止まり、ふいに声を掛けてきた。
「おはようございます! 山ノ上さん! 昨日(きのう)は良く眠れた? 」
高いトーンの透き通った声である。この声も、あの夢の中の少女とそっくりだと思った。
 眩しい光の中から現われたその女の子は、目鼻立ちが整いくっきりとした大きな目をしていた。そして不思議そうな表情でジッと見たのだ。そんな態度に、とまどいと気恥しさを感じて、少しうろたえた。すると、何故だか知らないが、顔がカーッと熱くなった。
「いや、あのう・・・、なんで、こんなに朝早う来たん? 」
やっと言葉を返した。急に心臓がドキドキと鳴った。
「アタシは、剣道部のマネージャーなんよ。みんなの世話役なんよ。そやから早う来たんよ。別に、おかしくないでしょ? 」
食入るように見つめて話すこの女生徒は、他校の生徒である彼に、少しは興味を持ったのだろうか。
「そ、そやけど、汽車があれへんやろ? 」
「家(うち)? 家(うち)はすぐ近くなんよ。歩いて五分もかかれへんのよ。そやから時間なんか、かめへんのよ」
真っ白なワンピース姿で、まるで踊るかのように、軽やかに体を動かした。
「あ、そう・・・」
その、妖精のような姿にドキドキしながら、生返事をして立ち上がった。
もう起床時間になりそうだから、みんなも起きて来る筈だ。今、こんな可愛い女生徒と、道場で二人で居る処を見つかると具合が悪いと思ったのだ。それで彼女には黙礼をして、急いで道場を出たのだ。
 柔道場へ戻ると全員が起きており、各々は顔を洗ったり布団を片付けたりしている。無論、布団片付けは一年生である。すぐに手伝いに加わった。

  

つづく



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posted by はくすい at 15:01| Comment(0) | 虹のかなた