2018年06月07日

M35宮坂正春氏 執筆の青春小説『虹のかなたへ』連載開始!その一 異郷の空へ㊷

その一 異郷の空へ㊷
 

部室は狭かったが、整頓されていて気分が良かった。しかし、プーンと汗臭い。これは仕方のないことだ。
 荷物を置き、着替えようか、と思った時、入口の方で大きな声がした。
「先生が来られました! 」
急いで道場に出てみると、部員たちが入口を挟んで二列に並び、不動の姿勢を取っている。慌てて走った。そしてその列の一番端に並んで直立した。
「おはよう」
片手を挙げて挨拶をしながら、顧問の先生が道場に入って来た。大柄な堂々たる体格で、とてもいかつい感じがする。背の高さは一メートル八十センチぐらいはありそうだ。アゴの張った四角い顔は相当に迫力がある。その体躯から見て、剣道より柔道の方が似合いそうだ、と思った。
 先生は道場の中央に正座し、生徒が整列するのを待った。
「礼ィッ! 」
部長が大声で号令を掛けた。先生の正面に整列した部員たちは
「おはようございます! 」
一斉に声を揃えて座礼を行った。先生は全員を見渡しながら
「オイ。今日はお客さんが来とる筈やが、どうや・・・」
先程の部長らしき生徒が答えた。
「ハイッ! 来とります。オイッ! 山ノ上君やったな! 前へ出なさい」
大きな声に
「ハイッ! 」
弾かれたように立ち上がった。そして、前に出て一番端に正座した。
「おう、君か。こっちへ来なさい」
先生の横に座った。緊張のあまり、口の中がカラカラに乾いた。
「紹介しておく。山ノ上二郎君と言うてな、海山高校の一年生や。海山高校には剣道部がないんや。それで急遽、ウチの合宿に参加する事になった。みんな、仲良くしてやってくれ。お客やからと言うて、遠慮する事はない。新入部員の一人やと思うたら、それでええんや。分かったな」
大きな声の説明に、部員一同は一斉に
「ハイッ! 」
と答えた。その一声から、合宿練習がスタートしたのである。
 一年生は、どこへ行っても一年生でしかない。一番下っ端である。だから、部長の命令には全て服従せねばならないのだ。
 箒掃除や雑巾掛け。そして水汲み等々、泉川高校の新人の時と同じ内容になった。けれど、嬉しかった。体が自然に動き、心が躍った。大阪から離れての、この二ケ月の空白を取り戻すかのように、全てに頑張った。


  

つづく


明日は役員理事会です!
IMG_4724[1].JPG


posted by はくすい at 10:34| Comment(0) | 虹のかなた