2018年04月05日

M35宮坂正春氏 執筆の青春小説『虹のかなたへ』連載開始!その一 異郷の空へ㉗

その一 異郷の空へ㉗
 
「只今、お母はん。今、おじいちゃんのお店へ寄って来たんやで。それで、サザエをご馳走になったんや。ほんまにおいしかったわ」
「お帰り。それは良かったねえ」
母に報告をした。そして、借りてきた大工道具を見せながら、まだ母には話していなかった、元雨天体操場の建物や創部の事など、祖父に話した内容と同様のことを詳しく説明した。そして、
「明日から夏休みやけど、ボクは学校へ行くんや。、校長先生の許可を貰ってあるから、あの建物の掃除をしたいと思うてるんや。道場が出来るかどうか、それはまだ分からへんけど、ボクは絶対にやって見たいんや」
「そう・・・。それでホントに一人で頑張るのん? 」
「うん、ボク一人や。その方がええねん、気が楽やし・・・。それで、お願いがあるんや。お弁当を作って欲しいんや、ネコメシでもええねん。あっそうか、ネコメシやったら、ボクでも出来るなぁ」
顔は希望に輝いていた。気力が体中に満ちているのだ。里子はいつもとは違う、激しい迄の意気込みを見せているその顔に、ハッとするものを感じた。
『この子は今、真剣になっている。自分はこの子に、辛い生活を強いているのだ。父親の居ない家庭でヘタをすれば、素直な性格でもネジ曲がって、変な方向へ行くかも知れない。今、外に向かって大きく伸びて行こうとしている。だからこそ、ここで自分の協力が必要なのだ。今、協力してやらねば、飛んでもない事になるかも知れない・・・』そう直感した。
「良いわよ、ちゃんと作ってあげる。そのかわり、頑張るのよ」
ニッコリと微笑みながら、里子はやさしく答えた。
『今に見ていろ! あの古い建物を、みんながびっくりする程、良い道場にしてやるぞ! 』全身に血が漲っていくのを感じた。

  

つづく


夜桜です

IMG_4209[1].JPG

posted by はくすい at 13:52| Comment(0) | 虹のかなた