2018年03月13日

M35宮坂正春氏 執筆の青春小説『虹のかなたへ』連載開始!その一 異郷の空へ㉑

その一 異郷の空へ㉑
 
「コラーッ! そこでナニをしてるんや! 」
大きな声がして、安田先生が走って来るのが見えた。二人はそれを見るなり
「チェッ」
と舌打ちした。そしてクルッと振り返ると、一目散に走って逃げて行った。
「なーんや。しょうもない腰抜けめ」
吐き捨てるようにつぶやいた。
「オイ、山ノ上君! 大丈夫か? ケガは無いのか? 」
ハアハアと息を弾ませながら、心配そうに安田先生が尋ねたが、ナンのケガなどあるものか。
「大丈夫です。ボクは平気です。先生! ボクは、あんな連中には絶対に負けませんよ! 」
平然としているその態度に、先生はすっかりと安心した。そして
『なんという、大した男なんだ』と感心をもしたのだった。
 安田先生は、あの二人・不田月男(ふだつきお)・井仲人也(いなかひとや)はクラスの中で嫌われ者である。いつもコンビを組んで悪さをしている。以前にも暴力沙汰で問題を起こして、停学一週間になった事がある。喫煙でも常習で、生活指導の先生方も困っているのだ、と説明してくれた。
 二人が二郎を連れ出した処を、先程の女生徒・池上恵が発見したのだ。これは大変だ、と直感した彼女は、すぐに安田先生に通報したのであった。
 教室に戻ると、級長の板頭と池上恵が、落ち着かない様子で待っていた。特に池上恵は、心配で顔が蒼白になっているし、手が小刻みに震えている。そこへ何事もなく、平気な顔をしているのを見るなり
「山ノ上さん! 大丈夫やった? ナンにも悪さ、されへんかった? 」
思わず駆け寄って手を握った。
「大丈夫や。ボクは、あんな連中には負けへんよ。怖い事なんか、なーんにもあれへん、平気なモンや。そやけど、暴力は反対やで」
「良かったァ・・・」
池上恵はさも安心した様子で、顔がほころび、元の明るい表情に戻った。そして、自分が二郎の手を握っているのに気付くと、『キヤッ! 』と小さな声を放ち、慌てて手を離した。恥ずかしそうにニッコリと笑うと、ポッチャリした顔立ちと厚ぼったい唇とが相まって、愛らしい表情になった。
「転校してきた日に、ケガでもされたら大変や。オレら学校の恥やで。アイツらそんな事、分かれへんのやろか。情けないヤツらや! 」
級長の板頭が憮然として言った。だが、二人のワルにからまれても、何事もなく無事であり、まったく平気な顔をしているのを見て
『スゴイ男がやって来た』と感心したのである。
 転入した学校の初日の、多難な前途を暗示するかのような騒動であった。

  

つづく



今年も綺麗に咲きました!校門の鉢植え黄ハート
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posted by はくすい at 15:31| Comment(0) | 虹のかなた